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TKAで使う器械の覚え方

「器械が多すぎて覚えられません」は、TKAをはじめて経験した看護師の正常な反応です。そしてそのまま、何が何だか分からずTKAが苦手になってしまった方も多いはずです。

器械出しは手順が長ければ長いほど、器械が多ければ多いほど、暗記で対応するのは難しくなります。なぜこの器械を使うのか。なぜこの手順で手術が進むのか。手技の根本と言いますか、いわゆる根拠が分かっていないと、手順や器械の多い手術には対応できません。

しかしながら、覚え方にはコツがあります。

もちろん、根拠は自分なりに調べていかなきゃいけませんが、ダラダラと手術開始から終了までに使うものを羅列して覚えると、逆にイレギュラーな場面に対応できなくなります。

特にTKAは、大腿骨遠位を切って脛骨近位を切って、また大腿骨に戻って4面骨切をしたと思ったら脛骨の仕上げをして...
このように行ったり来たりするので、非常に非常に分かりにくいんですね。

ということで、今回は僕が個人的に推奨する、TKAにおける器械の覚え方を紹介していきます。


「最初から最後まで覚える」ではなく、潔く区切って覚える

どんな手術でもそうですが、場面で区切って器械を覚えることで、狭く深く覚えることができます

TKAは器械や手順が多いので、暗記だけで対応するのははっきり言って不可能です。なぜ大腿骨遠位のカットブロックはピン3本なのか。髄内ロッドで設定する外反角とは何なのか。ジグで設定する骨切量は何を指標にしているのか。このあたりの根拠を併せて覚えていかないと、全く記憶に残りません。だから、TKAの度に徹夜して手順書やマニュアルを丸暗記することになります

しかも...

明日がTKAだからって今日徹夜して手順と器械を覚えたところで、どうせ満足いく器械出しはできないんです。(これは僕も昔経験したコトです)

だからこそ、「今日はココからココまでをちゃんとできるようにする」「残りはメーカーさんに甘える!」みたいな潔さも必要です。そうやって、少しずつ『確実に分かるところ』を増やしていけばいいんです。

TKAにおいて区切って覚えることのメリット

TKAにおいて場面で区切って手順や器械を覚えることには、大きなメリットがあります。

まず、TKAでは医師の手技により骨切りの順番が変わります。Dr.Aは大腿骨遠位を先に切るのに、Dr.Bは脛骨近位を先に切る...。みたいな感じです。院内で手技が統一されていたとしても、もしTKAを行う医師が異動して別の整形外科医が赴任したら、手技が一変するかもしれません。

もしあなたが執刀から手術終了までを一連の流れで覚えていたなら、骨切りの順番が変われば「あれ、全然違うんだけど...」となるでしょう。

また、TKAでは執刀医が同じであっても、手技を『行ったり来たり』する場合があります。大腿骨遠位、脛骨近位、大腿骨4面カットと手順通りに進んできたのに、「ギャップがキツいから脛骨を少し切り足そう」となり、また脛骨近位の骨切りに戻ったり。

手順通りに進めば分かるのに、順序が変わるとなぜか分からなくなる。これは僕も経験しましたし、これまで育てた後輩もやはり同じ。

流れで覚えると、流れの変化に対応する力は弱くなります。しかし場面で区切って覚えれば、場の状況に応じて知識を組み替えて対応することができます

TKAにおける場面の区切り方

TKAでは、骨切りごとに場面を区切ってください。具体的には以下の通りです。

  • 大腿骨遠位骨切

  • 脛骨近位骨切

  • 大腿骨4面カット

  • 脛骨の仕上げ

真っ先にやらなければならないのが、この4場面です。「今日は大腿骨遠位骨切を覚えるぞ!」と決めたら、大腿骨遠位骨切の流れと使用物品だけを調べ、覚えてください。

TKAは器械が多いので、流れで覚えていくと必ず「あれ、コレはどこで使う器械だっけ?」と混同してしまいます。しかし骨切ごとに場面を区切って覚えれば、その部位の骨切で使うものだけが頭に入ります。

さらに詳しく説明すると、髄内ロッドによる大腿骨遠位骨切なら、使う器械はこれだけです。

  • 髄内ロッド

  • ロッド用のハンドル

  • 骨切量や外反角を設定するジグ

  • 骨切ブロック

  • 固定ピン

  • カニ爪

機種や手技によって多少増えたり減ったりはしますが、人工関節の器械出しをするくらいの看護師が覚えられない量ではないはずです。大腿骨遠位骨切に使う器械はたったこれだけなのに、それでも器械が多いと感じたり間違えてしまう理由は、その他の骨切で使う器械との区別がつかず、混同してしまうからです。

目の前にTKAで使う器械セットがあったとします。器械の数は100点。これらを全て流れで覚えるなら、100点の器械をひとつひとつ覚えなければなりません。

しかし、まず大腿骨遠位骨切で使う器械10点を覚えたとします。すると、他に覚えなければならない器械は90点になります。当たり前だと思うかもしれませんが、ココが人工関節の器械の盲点です。

大腿骨遠位骨切で使う器械は決してその他の骨切りで使うことはないのです。

たとえば消化管の手術なら、ココではモスキートを使う、ココではペアン。3-0バイクリルを出して、またモスキート。このようにひとつの器械を使い回すケースが多いです。

しかし大腿骨遠位骨切で使う器械は、決して脛骨近位では使いません。人工関節は場面で区切って器械を覚えるほど、覚えなければならない残りの器械が確実に減っていきます

まずは徹底的に、骨切の場面ごとに器械を覚えていきましょう。そうすれば、確実に次のTKAの前に覚えるべき器械は少なくなります。

まとめ

  • TKAの器械は執刀から手術終了までの手順で覚えるのではなく、骨切の場面ごとに区切って覚える

  • 骨切の場面で区切って覚えると、骨切の順番が変わったり追加骨切になっても対応しやすい

  • 骨切の場面で区切って覚えると、その他の場面で使う器械との区別がつきやすい

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