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#007|器械出しの予習と復習、どちらを優先すべき?

前回のnoteでは、器械出しが勉強を進めるにあたり、勉強の範囲を決めること=勉強を有限化することが必要だと説明しました。

ここからはより具体的な問題にフォーカスしていこうと思いますが、今回のnoteでは「器械出しの予習と復習」について考えていきたいと思います。

予習と復習、どっちを優先すべき?

今日のオペの復習と明日のオペの予習が毎日のように重なる。器械出しにとっては、何よりも厄介な問題です。
予習を怠ればオペを耐え凌ぐことはできないし、かと言って復習を怠れば、次に同じオペを担当したときに大変な思いをする。予習も復習も大切であることが分かっているからこそ、どちらを優先すべきか迷ってしまうものです。
しかし、いま自分が何をすべきなのか。そして、しなくても良いことは何なのか。この2つさえはっきりしていれば、確実に予習と復習の優先順位はつけられます。予習と復習の優先順位を決められないということは、以前にもお伝えした有限化(勉強の範囲を決めること)ができていない状態です。

予習と復習の大前提

予習と復習の優先順位を決められない器械出しの多くは、そもそも予習と復習の目的が明確になっていないことがほとんどです。おそらくですが、多くの方は「手術の前の勉強=予習・手術の後の勉強=復習」程度に考えているのではないでしょうか。

ここからはあくまで持論になるのですが、予習と復習をする目的は、予習と復習をしなくてもよい状態になるためです。分かりやすい例で言うと、何度もカレーを作れば、いつかは作り方を見なくてもカレーが作れるようになります。同じように、器械出しにおいても「マニュアルを見なくても器械出しができる」になるために、予習と復習をするのです。

予習・復習によってマニュアルを見なくても器械出しができるようになると言うことは、予習実践復習のサイクルを繰り返すたびに、予習と復習の絶対量は減っていかなければなりません

予習とは?復習とは?

予習と復習を繰り返すたびに、予習と復習の量は確実に減らなければならない。これが大前提です。しかし、いつまで経っても予習と復習の量が減らない器械出しは意外と多いです。

このような器械出しに共通するのが、典型的な暗記型であること。

暗記型の器械出しは、まずマニュアルを暗記して手術に臨み、手術中にマニュアル外の器械を使った場合には、復習としてマニュアルに追記を行う、といったパターンを取ります。
術前のマニュアル暗記が予習、術後のマニュアル追記が復習なのですが、このパターンでは、術後の追記によってどんどん暗記しなければならない内容が増えていきます

このようなパターンに陥らないためには、何をすることが予習で、何をすることが復習なのかをしっかりと決めておく必要があります。

予習=手順や器械の暗記

まず、器械出しにおける予習とは暗記をする作業です。器械出しにせよ先ほどのカレー作りにせよ、何か技術を身につける際には必ず手順の暗記から始まります。そのため、初めての術式、あるいは経験の浅い術式ほど、予習が重要です。

一方で、予習の量は経験を重ねるごとに確実に減っていかなければなりません。(1年に1例しか行われないような特殊な術式なら話は別ですが)
そして予習の量を減らすためには、復習が必要です。

復習=手術手技の理解

予習は手順や器械の暗記なので、復習を手順や器械の追記としてしまうと、それは単に予習の量を増やすことになります。
実践を重ねるごとに予習の量を減らすためには、復習を単なる追記で終わらせず、なぜその操作をしたのか、なぜその器械を使ったのかまで掘り下げておく必要があります

以前のnoteでも少し触れましたが、暗記型の器械出しは「Dr.Aは、場面Bで、器械Dを使う。」という形で器械出しを覚えます。
このパターンでも器械出しはできますが、確実に予習の量を減らすには「Dr.Aは、場面Bで、手技Cをするために、器械Dを使う。」という形で術式を理解する必要があります。言い換えると、器械Dを使う根拠を理解する、ということです。

おさらい

長くなってしまったので、ここで一度分かりやすくまとめます。

予習とは手術展開や使用器械の暗記作業です。
これに対して復習は、実際に器械出しを実践して上手くいかなかった場面や、暗記したのに思い出せなかった場面の具体的な手術手技を学習する作業です。

平日は予習、休日は復習

ここまで予習と復習の目的やそれぞれの具体的な内容を解説してきたわけですが、結局のところ予習と復習、どちらを優先すべきなのでしょうか。

僕が実践してきた方法は、平日は全ての時間を予習に割り当て、復習は休日に回すというやり方です。限られた時間の中で学習を進めるためには、「今日は予習」「明日は復習」のように、メリハリをつけた方が良いです。下手に予習にも復習にも手を出してしまうと、学習そのものの質が落ちます。

「今日も明日も初めての手術」なんて状況であれば、今日も明日も予習のみに集中する。
その代わり空いた時間で復習できるよう、分からなかった場面やうまくいかなかった場面だけは付箋に書いて貼っておく。
付箋にメモするだけなら、数分で終わります。

もし「今日も明日も同じ手術」なんて日があれば、今日の復習は明日の予習にもなるので、じっくりと復習に時間をかける。

このような形で、メリハリをつけて臨んでみてください。

まとめ

全体を短くまとめると、基本的に器械出しは予習中心で良いと思います。しかし、毎日の予習に加えて質の高い復習を行なっている器械出しほど、マニュアルなしで器械出しができるようになるまでの時間は短いです。

次回のnoteでは、今回取り上げた「復習」に関して、手術手技を学ぶ方法をお伝えします。

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