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#001|器械出しにおいて何よりも大事なこと

器械出しに携わって15年が過ぎ、気が付けば「約20年、器械出しやってます」と言えるほど長い時間が経ちました。

いろんな経験をしましたが、良い経験もあれば、逆に思い出したくないような嫌な経験もあります。間違った器械渡すと不潔野に放ってしまう憎めない外科医とか、死ねと叫ぶ生理的に受け付けない外科医とか笑。

良い経験は自分自身を成長させてくれるけども、器械出しスキルという点で考えれば、嫌な経験から学んだこともたくさんあるなぁと感じます。

個人的に色んな知識をインプットして、色んな器械出しを見て、色んな外科医と関わって、そういう中で人それぞれ自分なりのポリシーみたいなものが確立されていくわけですが、やっぱり僕が器械出しにおいて何よりも大事だと思うのは、

器械出しは「外科医が必要とする器械を渡せてナンボ」ってことです。

そんなの当たり前じゃんって思われるかもしれないけど、これまでの経験の中で、器械を渡すことを放棄した器械出しも数多く見てきました。

  • 「必要なものは出てるから好きなの持ってって!」みたいなセルフサービス形式器械出し

  • 外科医に「次は何⁈」と言えるようになり予測というプロセスを捨ててしまった器械出し

批判してるように聞こえるかもしれないけど、器械出しも外科医もそれでいいなら、別にいいんです。

だけど、僕は嫌です。

このような器械出しを見るのが嫌なのではなくて、自分がこのような器械出しをすることが嫌なんです。

たったひとつの器械を正確に導きだして、間髪入れず渡したい。だから、外科医が器械の名前を発する時には、既にその器械を手に持っていたい。これが僕のポリシー。

いくらガーゼカウントや器械カウントが正確にできたとしても、器械台に患者の下腿が当たっていないことを確認できたとしても、まともに器械が渡せないんだったら器械出しとは呼べないし、器械出し看護師とも呼べない。単に看護師がガウンを着て器械台の前で安全管理をているだけ。器械出しの役割はまず何を差し置いても器械を渡すことであって、それを忘れてはいかんと思うのです。

もしかすると、オペ室未経験者やドラマの手術シーンを見たことがあるくらいの人からすれば、器械出しは「言われたものを出す作業」に見えるかもしれません。

しかし本質はそうではなくて、エキスパートは外科医が器械の名前を発する時には既に次の器械が何なのか分かっているし、少なくとも次に使う器械が3つ以内には絞れていることがほとんど。

外科医が必要とする器械を渡すということは、器械出しをするということは、生半可なことじゃないんです。

次に使われるたったひとつの器械を正確に導き出し、間髪入れずすぐに使える形で渡すためには、とにかく「器械を渡す」ことに没頭せねばなりません。

かと言って、安全管理を疎かにしていいと言っているわけではないですよ。しかし、安全管理を優先して器械出しを捨てるっていうスタイルは絶対に嫌なんです。

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