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「ありふれた教室」

先日、「ありふれた教室」という映画を観て来た。

※ネタバレ注意

舞台は、ドイツのとある中学校。

新任教師カーラが、校内で起きている盗難事件で、
疑われている自分の生徒を守るために、
職員室で動画を撮影していると、犯人とおぼしき人物が映るが、
やがてそれが波紋を呼んでいくというストーリーだ。

これを見ていて、つくづく思ったことは、
人は相手を守ろうとするあまりに、はっきり言わない事で、
自分の身を滅ぼしてしまうんだなぁ・・・と言う事だ。

カーラは生徒思いのいい先生なのだが、
おそらく〝母性〟が強いんだろうなと思ってしまった
(自身も移民の子だという背景がある)。

どうしても、自分の生徒たちを守りたいという、母鳥のような気持ちで、
彼らを庇護するのだが、その気持ちをはっきりと表明しないがために、
あらぬ疑いをかけられ、結局、生徒たちからも、保護者たちからも、
やがては同僚教師たちからも総スカンをくらってしまう。

それでも、まだ生徒を信じ、なんとか教室内を立て直そうとする、
その涙ぐましい努力は、観る者の心を打つのだが、
周りの悪意はどんどん広がっていっていき、収集が付かなくなってしまうのだ。

けれど、最後には(ここが見事だと思うのだが)、カーラは、
対立していた教師に、助けを求め、なんとか事態を打開しようとする。

その時に取った行動は、かつて読んだ、トリィ・ヘイデンの本の中身に
出てくるような事だった。

あらためて、あれは、子どもに対する普遍的な態度だったんだなあ・・・と
驚嘆してしまった。

反抗的だった生徒の一人、オスカーと、カーラの心の交流。

その後のエンディングで、警備員に高々と運ばれていくオスカーの堂々とした姿に、私は思わず、「蝿の王」とつぶやいてしまった。

まあ、たまたま、「蝿の王」を観たばかりだったというのもあるけれど、
なんだか、「子どもの中の王様」という気がしたのだ。

ある意味、一連の勝負を制したのは、このオスカーだったのかもしれない。

にしても、この信念と信念とのぶつかりあい、
まあよしんば勝ちを生徒に譲ったとしても、
それがカーラのやり方だったとしても、

おそらく彼女が、自分自身の意志表明をはっきりと
していたならば、ここまでの混乱はなかっただろう。

ある意味、教育には、〝母性〟ばかりではなく、
〝父性〟も必要だよな~・・・とは思ったことでした。


☆それでは今日もよい一日を。