M先輩の思い出 4
そろそろ、先輩とのことを書かなければ、また、Facebookの友だち申請が発動すると思うので、続きを書いていきますが・・・。
ある日、いつもは元気な先輩が、シュンとした様子で現れました。
その日は夕方だったのか・・・。
先輩の気分と相まって、なんだか重苦しい雰囲気だったことを覚えています。
お茶を出すと普段とは違い、大人しい先輩が、突然、意を決してという感じでぼそっと言いました。
「あたし・・・はじめて、しちゃった!」
えっ!?
しちゃったの・・・?誰と・・・?男と・・・?それとも、女と?
私の混乱を余所に、
先輩は、なんだか嬉しそうではなく、辛そうなのが印象的でした。
彼は明らかに、初めての体験で傷ついている様子でした。
詳しく話を聞いてみると、テレビ局のプロデューサーだか、芸能界のお偉いさんだか(すんません、ウロ覚えで・・・なんせ、とてつもなく古い話なので・・・)、とにかく先輩に仕事を紹介してやると言っていた男性が、
「ね、いいだろう、いいだろう」と
仕事を餌にしつこく迫り、ついに根負けして、その男性に捧げてしまったと言うのです。
(お〇を)←すんません・・・下品で💦
でも、ここは大事なところなので、押さえておきたいのです。
とにかく彼は、先輩のお〇をしきりせがみ、そこで体験してみたいといったそうです。
先輩は嫌がったそうですが、結局押し切られ、大切な処〇を奪われてしまったそうです。おそらく本意ではなかったのでしょう。
別に好きでもない人と、ただ興味本位に身体を使われただけ、というのが、乙女心をいたく傷つけたのだと思います。
「痛かった・・・」
とボソリ呟いていました。
はぁ・・・。
聞き終わっても、私は、ため息くらいしかつけませんでした。
先輩の悔しさが伝わってくるようでした。
仕事が欲しいがために、そんな事があると言う噂くらい私だって知っていたし、私たち、映像学校の講義でもそんな事が話題になったくらいです。
さる女優志望の学生が、講師に、「もし、仕事をやると言われて、体を求められたらどうしたらいいですか?」と質問した時に(大体、二十歳前後の学生たちで、こんなきわどい質問が出る事自体も異常だとは思いますが・・・)、その講師は、半ば心外だというように、「それは分るでしょう?君がどうしたいかですよ!」と言ったのです。
それは、つまり、そういう事ですよね。
仕事が欲しかったら・・・自分で判断しろって、そういう事だと思います。
これは今から四十年近い前の話なので、今とは価値観や倫理観も違っていたということをご了承ください。
私があまりにも深刻な顔をしていたので、我に返ったのでしょう。
「あ、でも、その人にあげてよかったわ!」と、先輩は、急に空元気なのか、明るく振る舞い始めました。
おそらく、自分の今の状況を惨めにはしたくなかったのだと思います。
あくまでも愛による行為にしたかったのでしょう。
でも、そんな事、誰が見たって、明らかでしょう?
道具として扱われたのは本人だってわかっている筈です。
私は、何も言えずに、ただ「そうなんですね」というしかなかったのです。
でも、その時に私にある疑問が芽生えたのです。
あれ?先輩は、〝おカマ〟の筈なのに、男性と出来て、嬉しくないのかしら?と。
確かに、無理やりやられたということはあるにしても、普通の男女間とは違って、なかなか相手が見つからないのも事実で・・・。
そんな中、まあ、体を重ねたというのは、彼にとっては喜ばしいことではないのだろうか?と、ふと思ったのです。
でも、「痛かった・・・」と言って、辛そうにしている様子はまるで、
〝レイプ〟にでも遭ったようで、もしかすると、M先輩は、真正の〝おカマ〟ではないのではないか?と感じたのです。
もしかすると、先輩の中には、まだ〝オス〟としての本能が残っており、彼は本当は、〝男〟だったのではないだろうか?と疑問に思ったのです。
〝男〟が〝男〟にそういう行為をしたならば、それは、〝性欲〟だけではなく、〝支配欲〟が関わってくるので、その組み敷かれたという事実に、先輩は打ちのめされていたのではないかと、今なら思います。
けれど、当時はそんな事は分からず、ただ、〝酷い事だ・・・〟と心の中に刻まれただけでした。
つづく