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「はじめましてからはじめよう」

毎月、地元の南海日日新聞社様にて、エッセイを書かせていただいています。
今回は、四年前にUターンした時から感じていた、「島人(しまっちゅ)とは何か?」ということで考えてみました。

良ければ、どうぞお読みください。(*´ω`*)




「はじめましてからはじめよう」

 GWに帰省して思った事がある。それは、島外から来た人がとても多いという事だ。九州はもちろん、関西、関東、果ては北海道からという方もおり、まさしく全国津々浦々から集まっている。

 4年前にUターンした時からそれを感じてはいたが、その時の気持ちは、「やれやれ、やっと故郷に帰ってきたわい」とよそ行きを脱ぐと、実家にお客さんがいて、慌てて服を着直したような感覚だった。

 なので、しばらくは、島の人とそうでない人とに対し、方言を使ったり、使わなかったりしていたほどだ。いつの間にか島は、多国籍国家ならぬ多県民国家になっていた。

 けれど、私が子どもの頃はそうではなかった。大抵が島の人で、たまに親の転勤で県本土から転校生が来るという感じだった。そうして、彼らが放つ都会的な雰囲気に、競って友達になりたがったものだ。

 しかし、これほど島外の人が多いと、逆に「島の人」と言えるのは、どれほどいるのだろうかと考えた。そう、私はここ数年、「島人(しまっちゅ)の定義」に頭を悩ませていたのだ。

 島で生まれ育ち、そのままずっと島にいるのなら「島人」だろうが、ほとんどの人は、高校を卒業と同時に進学や就職で出て行ってしまう。かくいう私もUターン組だが、カシャ餅もふくらかんも作れない。そんな自分は、半分島人、「半島人(はんしまっちゅ)」ではないかと自覚しているのだ。

 では、外部から来た人が、島人でないと言い切れるのだろうか? 私などよりはるかに、島の事を知り尽くし、積極的に地域に溶け込んでいるのに…?などと思考は堂々巡りしていた。

 そして、ようやく思い至った。島を愛してくれる人は、みんな島人ではないかと。島を愛し、守り、育んでくれる人は、皆、島人と言えるのではないかと。幸いな事に、私の出会った人たちは、「奄美が好きで、好きで」と言ってくれる。それならば、そういう人たちをひっくるめて、「島人」と呼んでもいいのではないかと思った。

 だから私も怖がらずに言おうと思う。「はじめまして。どちらのご出身ですか」
 そこからが〝共生〟の第一歩が始まるような気が今している。

                             了



※私の故郷は、2021年に世界自然遺産に登録されたのですが、
うかつにも私は、それ以前から、島の風土や温かさに魅かれ、
島外からやってくる人達が多いということに、
Uターンするまで気がつかなかったのです。

帰ってきてから、ようやく気がついたという次第で・・・。

なので、最初は、その環境の変化に馴染めなくて、
四苦八苦していたのですが、
最近はあまりにも島外の人が多いために、
最初の挨拶は、まず、
「はじめまして、どちらのご出身ですか?」
になってしまいました。

おそらくこれは、ウチの島だけではなくて、日本の過疎と
呼ばれる地方では、少なからず起こっている現象ではないかと
思っています。

日本民族大移動が、どうやら始まっているような感じですよね。

そんな中で、元からいる人々は、どう対応していくのか、
果たして、文化や伝統は守られてゆくのか、がこれからの
課題になっていくことは、必須のような気がします。

元からいた人々は、新しく来た人々を受け入れ、見守り、後継者を育て、
逆に、新しく来た人たちは、元からいた人々の精神を大切にし、
学び、尊び、受け継いでいくことが求められている気がします。

これからはそんな〝共生〟社会が実現するといいなと思い、書かせて頂きました。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。


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