見出し画像

総額54億円の資金調達、舞台裏を語ります(エクイティ編)【前編】

Baseconnectの財務責任者の中辻(@Naka_CPA)です。

先日、公表しましたとおり、2023年2月7日のシリーズBの資金調達として、総額54億円の資金調達を実施しました。シリーズBではZ Venture Capital様をリード投資家として、日本郵政キャピタル様、ジャフコ様、ユーザベース様、Salesforce Ventures様、NTTドコモベンチャーズ様、エン・ジャパン様、京都信用金庫様(イノベーションC投資事業有限責任組合)、国内機関投資家、欧州系海外投資家からの出資及び金融機関からの融資により調達しています。今回の資金調達により累計資金調達額は82億になりました。

マーケット環境が極めて厳しい中で、大型の資金調達を実施できたことは、大変嬉しくあるとともに株主・金融機関の大切な資金をお預かりすることに対して更なるプレッシャーを感じています。サポートして下さった株主の方々、Baseconnectの仲間に感謝の言葉しかありません。本当にありがとうございました!

なお、今回の記事が、スタートアップファイナンスに携わる方々にとって、少しでも参考になればと思い、筆を執っています。スタートアップ冬の時代と言われている中で資金調達をしている方々に少しでも参考になれば幸いです。

また資金調達を機に、技術・ビジネス・データ・プロダクト・新規事業の5領域について、経営人材候補のポジションをオープンいたしました。少しでも共感いただける部分がありましたら、是非一度お話する機会をいただきたいです。また、上記に関心を持っていただけそうな方にお心あたりございましたら、ぜひご紹介をいただけましたら幸いです。以下リンクになります!

シリーズBの資金調達の記事は、前編(シリーズB資金調達のエクイティ編)、後編(シリーズB資金調達のデット編)の2部作で執筆させて頂きます。本日は、前編にあたります。

1. シリーズB資金調達の大枠のスケジュール

大枠スケジュール

Baseconnect資金調達の特徴として、エクイティとデットをバランスよく組み合わせて調達をしています。本シリーズBの資金調達に関しても同様で、まずはエクイティにより資本増強を行った上で、デットの調達活動をするといったスケジュールで進めました。資金調達のピッチ資料などの下準備を始めたのは、2021年夏からであり、クローズは2023年1月だったので、トータル1年半ほどの時間を要しました。長く時間がかかった要因としては、マーケット状況の悪化などもありますが、しっかりとエクイティ調達を実施し資本増強を行った上で、デット調達を行う点にもありました。

2. シリーズB資金調達のプロセス

大枠のプロセス

ピッチ資料の作成なども大事なのですが、Baseconnectの事業との親和性やBバリュエーションの規模の観点から、事業会社(CVCも含む)からの出資もメインターゲットになりました。そもそも事業会社からの出資にあたっては、事業提携の内容も大事になってくるため、「事業との親和性」が大事になってきます。一方、事業を作るにはそれなりに時間がかかることから、事業提携の活動を先に進めることからシリーズBの調達活動を始めています。結果的に事業を作るのは時間を要したこともあり、先に進めていて良かったです。

また、Baseconnectのバリュエーションがそれなりの規模になってきたこと、調達活動開始時の2021年夏ごろはマーケット環境が良かったこと(=当時は海外機関投資家が日本の未上場投資に参入)もあり、海外機関投資家にもアプローチしています。海外機関投資家へのアプローチに伴い、英語でピッチ資料準備と説明が必要でした。日本語のピッチに加えて、英語での準備も必要だったことに伴い、より時間が要しています。

3. 資金調達において、下準備・事前検討が大事

資金調達において、下準備・事前検討が非常に大事です。下準備や事前の検討次第で資金調達の成否が変わってくると言っても過言ではありません。大事なポイントを下記に列挙します。

  • きちんとKPIを出せているのか?事業のファンダメンタルがしっかりと出だしているか?

  • ビジネスモデルに将来性があり、今後、伸びそうなビジネスモデルを構築しているか?

  • 事業会社との事業提携が進んでおり、ある程度の形になっているのか?良好な関係値を構築できており、出資をしてくれそうか?

  • 良い組織が作れており、事業計画のエグゼキューション能力が高いのか?

  • 今回のファイナンス戦略が発行体にとってベストな方法になっているのか?例えば、エクイティ増強後にデット調達を実施する、キャッシュが枯渇しており、不利な立場での交渉になっていない等。特にキャッシュが枯渇しつつある場合には、発行体としては資金調達を実施せざる負えない状況にあり、不利な条件交渉になるケースが多いです。ギリギリでのキャッシュポジションで資金調達を実施するのではなく、ある程度、余裕のある状況で資金調達を実施する必要があります。

  • 現在のマーケット状況を鑑みて、資金調達を実施すべきなのか?

いくつかポイントを列挙していますが、エクイティでの資金調達は「事業の魅力度」が一番大事になってきます。エクイティファイナンスは、あくまで事業が伸びている、若しくは伸びることが見込まれる前提で出資してくれるので、「事業の魅力度」が大前提です。

下準備や事前検討は一朝一夕で行えるものではなく、全て対応しおうと思うと、資金調達前に膨大な時間が必要になります。ファイナンス活動は、発行体の魅力度を伝えてファイナンスを実行する手段であって、そもそもの発行体のファンダメンタルや下準備がないと、難しいです。

4. シリーズB資金調達にあたって

シリーズBエクイティの資金調達にあたって、いくつか印象的なハードシングスやイベントがありましたので、ピックアップして書かせて頂きます。金額が大きくなればなるほど、資金調達は長丁場で様々なハードシングスやイベントが発生します。今回の資金調達においても例外ではなく、様々なハードシングスやイベントがありました。当時は、精神的・肉体的にもかなり辛かったですが、こういった経験を通じて大きく成長させて頂けました。

⑴ 株式市場の状況

マザース・日経平均

シリーズBの資金調達にあたって、まずは株式市場は外せないテーマの一つです。資金調達活動をし始めたのが2021年夏からで、その時のマザーズ・日経平均指数は、米国での金融緩和を契機にバブルの様相を呈していました。当時はこのままの相場環境が続くのではないかと思ってたぐらいで、正直、今がバブルの状況であったと認識しておりませんでした。米国・日本の株式市場で赤字にも関わらず、PSRが20x~40xついている銘柄も多数あり、冷静に考えてみると異常な状況であったと思います。

2021年夏は、上場株式のバリュエーションが高く、上場株のトレーディングでは利益を得ることが難しくなっており、海外機関投資家がクロスボーダーで非上場投資に入ってくる全盛期でした。実際に有名なスタートアップが海外機関投資家から大型の資金調達を実施していました。

Baseconnectもそれなりにバリュエーションが高くなってきたことや多額の調達額が必要になってきたことに伴い、海外機関投資家との交渉を始めたのもこの頃からでした。

ただし、米国においてインフレ抑制をするためにFRBの利上げ表明が契機となり、マーケットの環境が怪しくなってきたのは2021年冬ごろです。まずは米国株式市場の相場環境の悪化に伴い、海外機関投資家もクロスボーダー投資から離れていきました。

当時、株式市場の悪化が、いずれは非上場のマーケットに影響を及ぼす危機感を感じており、早めにシリーズBのエクイティ資金調達をクローズする必要があるのでは?ということで、焦りを感じ始めていました。この頃から早めに交渉・手続きを始めました結果、株式市場の悪化の影響を少しでも回避できました。

⑵ シリーズB資金調達の事前準備

上述のとおり、事前準備で資金調達の成否が決まってくるぐらい非常に大事になります。事前準備に関しても準備する作業が多く、一旦準備したとしても再度、練り直しや修正が必要になってくることも常です。

事前準備として苦労したのは、①事業構築、②ターゲットリスト、③ピッチ資料・依頼資料作り(英語も含む)です。

それぞれ膨大な量のリサーチを行うことが必須であり、リサーチだけではなくヒアリングを通じて情報をもらったりと様々な情報収集を行いました。

ターゲットリストの作成にあたっては、INITIALで直近の資金調達額・バリュエーション、直近投資しているファンド・その傾向・ファンドサイズなどの膨大な量の情報を調べています。集めたデータの中からいくつかの切り口で優先順位をつけて、スコアリング化してターゲットリストを作成しました。

ピッチ資料・依頼資料作りに関しても、上場企業のIR資料を参考にするであったり、英訳に関してもやはり工数はかかるので、色々と苦労しました。

⑶ 事業会社(CVCを含む)との資本業務提携

シリーズB資金調達にあたって、事業会社(CVCを含む)からの資本業務提携を実現すべく、シリーズB資金調達を本格的に進める前に事業作りにも着手しています。

事業会社からの資本業務提携にあたっては、投資からのキャピタルゲインは大事であるものの、そもそも業務提携がある程度、形になっている必要があります。CVCの投資方針によっては、純粋なキャピタルゲインのみを狙っているCVCもありますが、Baseconnectとしては、資本業務提携をすることによって、ファイナンス面・事業面の双方でシナジーが発揮できることを目的として、資本業務提携の模索を進めていました。

業務提携作りにあたっては事業提携の提案から実行まで全社一丸で取り組んでいます。Baseconnectはデータビジネスであることから、事業提携案に関しては様々なので、各社提案内容のカスタマイズが必要でした。また、事業提携案を持っていくにしても、決裁権限者に近い方が意思決定も速く、成立確度も高いので、いかに決裁権限者に近づけるかどうかが非常に大事です。そういった意味で、「法人営業」だなとつくづく思います。

事業会社との資本業務提携は、事業及びファイナンス面でもプラスになることが多いです。一方で、事業提携がそれぞれカスタマイズする必要があることや、ある程度のファイナンス規模を集めようとするとチケットサイズ的に結構な数の事業会社から調達必要があるなどの課題もあります。ちなみに、一般的に事業会社におけるチケットサイズはVCと比べると、小さくなる傾向にあります。

Baseconnectのメンバーのおかげで、いくつかは資本業務提携を行うことができました。また出資までは至らなくても、新たな気づきや業務提携を行ってくださる会社様もございます。シリーズBを通じて様々なラーニングあり、会社としても個人としても成長させて頂きました。

⑷ 投資家とのディスカッション・デューデリジェンス

投資家の方々とは様々な角度でディスカッションをさせて頂き、色んなヒアリングも受けました。もちろん我々が課題であると思っているポイントも指摘を受けるのですが、気づいていないポイントの指摘も受けることにより、事業の理解度が深まったことと、戦略の解像度も上がりました。

投資家の方々は、Baseconnectだけではなく、様々な会社を見られているので、客観的な観点からの指摘をして頂けます。ディスカッションの準備にあたっては大変なことも多かったですが、気づきや成長の機会となったので、感謝しかないです。

また、Baseconnectのステージがミドル・レイターに近づいていることもあり、財務・法務デューデリジェンスもありました。Baseconnectのバックオフィスはリーンでやっていることや監査法人からの監査も重なって、かなり大変でした笑

当時は、資金調達交渉、投資家対応、IPO準備、監査、デューデリジェンスのプロジェクトなど10個ぐらい走っている感じでカオスな状況ではありました。特にデューデリジェンスは大変でしたが、事業会社やFA・DDアドバイザーの立場から実施した経験、及びDDを受けた経験があったことなどから効率よく進めれました。あの時は大変で「いつ終わるんだろ?」という状況でしたが、何とか無事に終わることができて良かったです。また、デューデリジェンスを通じて普段気にしないようなポイントも指摘を受けて、色んな学びがありました。

5. 今後の展望

Baseconnectの目的・存在価値は「世界中のデータを繋げることで、ダイレクトに必要な情報にアクセスできる世界を作る」です。現状では、Musubuとパートナーシップ事業を通じて、会社情報をお届けしていますが、まだまだデータビジネスの一部分に過ぎず、大きな広がりがあると考えています。

今回のシリーズBで調達した資金を基に、Musubuをさらに進化させていくと共に、新たなデータビジネスの創出にも取り組んでいく所存です。

壮大なビジョンを達成するためには、まだまだBaseconnectは成長していく必要があります。

この壮大なビジョンを達成するため、共にBaseconnectの未来を作っていく仲間を募集しています

6. 最後に…

今回のシリーズBは膨大な時間と人手がかかりました。結果的に1年半ほどファイナンスを行うことになりましたが、今回の大型調達を達成できたのは、サポートして下さいました株主様、Baseconnectのメンバーです。この場を借りてお礼申し上げます。

今回のnoteで書ききれないこともたくさんありますが、少しでもスタートアップでファイナンスに携わられている方の参考になれば幸いです。もう少しファイナンスに関してお聞きになりたい等の方がございましたら、Twitterアカウントのメールでご連絡頂ければ幸いです。

追伸)
今回の記事は「Baseconnect、54億円調達の舞台裏(エクイティ編)」です。次回の記事は「54億円調達の舞台裏(デット編)」を予定しております。ここまでマーケットの状況が悪化してくると、デットの重要度は上がっており、デット活用がスタートアップ成長の肝になってきますので、そちらの記事も読んで頂けると嬉しいです。

いいなと思ったら応援しよう!