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冬の汗【 #言葉を宿したモノたち 】
ワタシがこの家で過ごすようになって八年が経つ。
最初の一年でニンゲンの夫婦間に一人の女の子が生まれた。その時の子はこの七年で成長し今やランドセルを背負って小学校に通うようになっている。
時の流れは速いものである。ワタシよりも後にこの家にやってきたはずの電化製品たちが、草臥れたのか代替わりする光景をみるようになった。
彼らに比べるとワタシは歳をとりにくい存在なのだろう。未だに見た目は透き通るほどの肌である。自慢だった。しかし、それでも最近は黒ずんだシミが目立つようになってきた。それでもワタシは美しいままである。
この家に明るさを取り込むこと、空気を入れ替えることを生きがいに過ごしてきた。
派手に動き回るというわけでもないがきっちり仕事をしているのである。ワタシの場合、この姿形こそが仕事なのだ。部屋に溶け込むような姿であり続けること、当たり前の風景のようにあり続けることがワタシをワタシとする。だから普段感謝されることもほとんどない。
さて、暑い夏がおわり、短い秋が去って、寒い冬が来た。
あの七歳の女の子がワタシの傍にやってきた。何の用だろう?
「さむいのに汗をかいているんだね。」
そう言うと女の子は私の汗を拭きとってくれた。
ふふふ、それはね… 結露っていうのよ。
いつか正しい知識を親から教えてもらいなさいな。
でもありがとう。
今とても良い気分だよ。
◇◇◇
さて、この物語を読まれた方に考えていただきたい。
これは何からの視点で描かれた物語だと思いますか?
つまりワタシは一体何だと思いますか?
Twitterの引用コメントでお答えください。
大喜利にしていただくことも大歓迎です。
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