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妄想と虚構の坂るいす【あのキスシーンはあったのか】

企画『あなたのnote読みます』特別編。

突然だが、私はデミアン・チャゼル監督が撮った映画『ラ・ラ・ランド』が好きである。そこで流れる音楽も好きだし、ダンスも好き、そして何より終盤の虚構がたまらなく好きなのだ。
ラ・ラ・ランドはジャズピアニストを目指したセブと女優を目指し成功したミアの別れの物語である。

平然とネタバレをするが、ラ・ラ・ランドは終盤、セブが営む地下のライブハウスでミアとのキスシーンがある。ありえないぐらい唐突なキスシーン。それは視聴者がついてゆけず呆然とするぐらいのワンシーン。そしてそのキスシーン以降は全てセブの妄想であるという構造だ。それをデミアン・チャゼル監督が音楽と虚構で陳腐に演出し続けることで映画は幕が閉じる。

はじめあまりの展開に視聴者は何を見せられているのか分からなくなることだろう。でも見続けるうちに気づくのだ。「ああ、これはセブとミアが別れなかった世界だ。たらればの妄想、もしもの世界。」だと。

そして後から思い知る。あのキスシーンも本当は嘘で、そこからの展開は全てが虚構の世界なのだったと。
映画なのだからそもそも全てが虚構だと仰る方がいるかもしれないが、そういうことを言っているのではない。入れ子構造で虚構を演出した点に驚かされた。私はそう言いたいのである。

さてと坂るいすさんが先日おもしろい短編小説を書いてくれたので紹介する。本当に短いショートストーリーだ。でもそこには小さいながらも明確に妄想と虚構の演出があって、私は正直驚かされた。

物語は夢の中でのキスシーンから始まる。
相手は同級生の男の子だ。そこから相手を変に意識してしまうという展開。よくある展開と言えばそうなのだが何かが違うと読者は感じるはずだ。

特に終盤の終盤。

この演出は小説でないと出来ない特殊な演出だ。あとでリンクを貼り付けておくからぜひ読んで欲しいが、最後のシーンで読者が何を見るのかは選択肢が用意されている。キスシーンは一つも描かれていない。でも確かにキスシーンを見せられるのである。でも後から思い起こせば、それは思い過ごしかもしれないと気付かされる。
「そのシーンは本当にあったのか?」
主人公である藍子の妄想か、読者である私の脳が勝手に描いた妄想か。

私と同じ思いに駆られた読者がいるとすれば答えはただ一つだ。
あなたは妄想させられたのである。

ぜひ読んであなたの目で確かめてみてください。
今回は企画『あなたのnote読みます』の特別編でした。

#あなたのnote読みます #note紹介

ここのコメントを目にしてくれてるってことは最後まで読んでくれたってことですよね、きっと。 とっても嬉しいし ありがたいことだなー