暗峠を歩く
歩いて生駒山をこえたい。通勤電車に揺られながらふと思い立った。
理想を言えば車の交通量が少なく、駅から降りてすぐにハイキングが開始できて、下山後にまた都合よく電車の駅があれば良いなと考えていた。そんな都合のいいルートが果たしてあるのだろうか?
あったわ。近鉄額田駅から暗峠(くらがりとうげ)をこえて南生駒駅まで歩くルート。ほぼ直線で6.7km。
衛星写真の画像からみると綺麗に生駒山を横断できているのがわかる。計算上 大人の足なら1時間50分で歩行可能なようだ。まさに理想のルート。
コースの標高を見たところ、大阪側が急な勾配であることがわかる。2.6kmの道のりで400m程度を登ることになりそうだ。奈良側は4kmの道のりを350m降りるわけだから比較的 なだらかと言えるだろう。これで予習はバッチリだ。おそらく気温も平地よりは涼しいだろう。
山道が大好きな8歳の息子に「一緒に行くか?」と訊いたら即座に「行く!」との回答あり。そのようなわけで土曜は峠越えをすることになった。
13:00に額田駅に着いたが、駅前からすでに坂道でおもしろい。これでこそ登り甲斐があるというものだ。
思わず見過ごしてしまいそうになるがこれが暗峠に続く道だ。そして、冗談だと思われるかもしれないが国道である。【国道308号線】
パッと見では住宅地に入る袋小路の道にしか見えない。
道幅はすこしばかり広まったが依然として細い道が続く。
ふもとにはお店があって結構にぎわっていた。峠から降りてきたハイキング客だろうか。
さて、ここからが本番といった感じだろうか。
道が急に薄暗くなり始めた。
大阪側は勾配がきついので歩いて数分でこの景色。
見下ろせば大阪平野が一望できる。
途中で豊浦橋がみえる。今回のルートからは外れるので渡らないが橋の上から滝を見ることができる。
橋の向こう側は完全な山道なので引き返す。
そして再び国道308号線に戻る。
何かと思うかもしれないが休憩所である。ベンチがあるのでちょっとお茶休憩。
ここから先ほどの滝場に下りることができるのだろう。きっと古くからの禊の場なのでしょう。
このあたりから勾配が更にきつくなり始める。
コンクリートの道にタイヤの跡が色濃く残るポイントに差し掛かった。嘘みたいな坂だ。その傾斜角度は30度あるそうだ。
流石に息子もしんどくなってきたのか歩くペースが鈍くなってきた。「おんぶしよっか?」と訊ねると嬉しそうに背中によじ登ってきた。ここからは22kgの息子を背負っての山登りである。左手で背中の息子をロックしながら、右手で1.6kgのカメラを構えるのは少しだけ難しかったが、不思議と苦ではなかった。
最大傾斜から200mほど進むとあずまやが見えてきた。
冷たい水が湧き出ている。どうやらここが弘法の水と呼ばれるポイントらしい。ひしゃくがあったので冷水を受け、手と顔を濯がせてもらった。息子も生き返ったかのように元気が戻った。
おんぶは終わり。
ベンチがあったので少し休ませてもらった。
道中でこういったポイントが随所に現れるのがありがたかった。
弘法の水のポイントを抜けると急に空が開けてくる。
明るい。暗がりではなくなった。
おおお!
田んぼがある。稲がある。アジサイが植えられている。アジサイはすでにドライフラワー化していたが色味はまだ鮮やかだった。
それだけで感動する。息子もこの表情である。
陽が差すポイントとなり、また気温が上がり始めたが周りの木々のおかげかかなり涼しく感じる。
木の枝でできた天然のトンネルを抜けるとそこには水田があった。
ここからは人の気配がある。
コンクリートから石畳の道にかわった。
ああ、ここが峠なのか。
峠には集落があり、お茶屋があった。
我々は吸い込まれるようにお店に立ち寄った。すでに先客としてハイキング客やバイクのツーリング客が8名ほどおりお店はにぎわっていた。
お茶屋をあとにした我々は親子はふたたび歩き出した。
頂上のポイントでは暗峠を横切るように信貴・生駒スカイラインが通っており、街道的にはその下がトンネルになっているのでそこをくぐって進んでゆく。
さあ歩こうかと思った矢先
右手を見ると急にお洒落な喫茶店が出現した。
お!おおお?
あまりに驚いたのでさっきお茶したばかりなのに入ってしまった。
アイスコーヒーをグイッと飲み干して再出発。
すると今度は美しい棚田が目下に広がった。目にまぶしい。
暗峠は頂上付近が明るい。疲れを吹き飛ばす景色の展開だと思った。
ずっとここに留まっていたい気もするが、この時点で15:30だったので南生駒駅までくだる決意をする。帰らなくちゃ。
今は明るいがこんな街灯も無いところで日が暮れたら遭難してしまう。
ここからは後半戦だ。前方に広がるのは奈良盆地、手前の低い山稜が矢田山、奥にはうっすら若草山が見えるのがわかるだろうか。
この景色はまた格別だ。
ようやくコンクリートの道が終わり、アスファルト舗装の道に切り替わった。ここまで来ればもう安心だ。
16:30に南生駒の駅に到着。
途中 休みもって進んだこともあり、結局は3時間半のハイキングとなった。
一日の歩数は16000歩であった。