『感知する力』三人の読み手はどう読むのか?| #あなたのnote読みます 【特別編】
今回は特別編noteです。
嶋津亮太さんからのご依頼で、仲高宏、入谷聡さん、ヤマシタマサトシさん、この三人の読み手がもし同じ文章を読んだなら、どういったアドバイスを書き手にフィードバックするのかを試みようとするものです。
手渡された記事は嶋津亮太さんが2018年10月にnoteにアップした文章。
『感知する力』
それでは私、仲高宏のフィードバックを公開します。
嶋津亮太さんへ
こんにちは。ご依頼承りました。
『感知する力』
こちらの記事にアドバイスをお願いしたいということですが、実は特に提言することはないので困っています。
一年以上前の記事ですが色あせておりません。
仮にもし私が嶋津亮太さんと知り合いではなく、いま開催している『あなたのnote読みます』企画でこの記事がポンと送られてきたなら、依頼人に自信をもって続けてくださいと言って流してしまうでしょう。
でも、嶋津さんとは一緒にイベントを盛り上げてきた同志みたいな間柄ですから、もう知らない人扱いにはできないので、やっぱり何かお話しした方が良いのでしょうね。
そうなると深い場所へいかなければなりませんね。
思い切って今回は『知識と実感の結合』という超絶難しい話をします。
えーと。心の準備は宜しいでしょうか?
多少強めに行きます。
『感知する力』の記事、良く書けていますが、実は残念ながらこの文章は嶋津さんが持ちうる知識と想像の範囲内だけで事象を説明して完結してしまっている節があります。
え?そんなの当たり前じゃないかと思うかもしれません。人は自身の知っていることしか書けないですからね。でも世の中にはそんな当たり前のことを平然と無視して書き抜いてくる人たちがいるんですね。
そしてそういった書き手だけが見せてくれる世界というものがあります。
そのことをまずおさえておいてください。
さて、記事内で2万Hz以上の音の話がでてきましたが、人が感知できない範囲の話って説明が難しいですよね。
ひとまず身近な感覚である距離感を例に置き換えてみましょうか。
たとえば8,000mってどれくらいの距離かわかりますか?およそ人が二時間かけて歩く距離とイコールです。何となく想像がつくと思います。
でもその距離が垂直になったとしたら想像できますか?急に分からなくなりますよね。頭上8,000mってどれぐらいだ?そう感じるでしょう?
さらっと答えをいうと夏に出現する入道雲の高さです。日本で暮らしていれば入道雲くらいは誰しも見たことがあるでしょう。
さて、ここからが本番です。ネパールの山々の高さを文章で書けと言われたら嶋津さんはどう表現しますか?
おそらく教科書から得た知識だけ書くとしたらそのまま『8,000m級の山々』と書いてしまうのではないでしょうか?私もそう書いちゃうと思います。
でも、ここで急に登場してもらいますが、田中泰延さんは違いました。
写真に収めようとはするが、まるで伝わらない。
8千メートルを超える山というのは、
実感でいうと、日本のわたしたちが
夏場に見る巨大な入道雲、あの大きさ、高さが、
そのまま、「岩」なのである、
そしてそれが何十もつらなる。
(田中泰延)
はじめてこの一文を見た時は棍棒で頭を殴られたかのような衝撃がありました。なぜなら見たこともないネパールの山々が急に私の目の前に実感を伴って現れたからです。それまでは単なる数字としての知識でした。
言うなれば、一つの描写表現が私の知識と実感を結合させたのです。そして、驚くべきことにそれは私の想像の領域外で起こったことなのです。
これが一流の書き手の腕なのだと畏怖しました。
話を戻します。
上記を踏まえて、2万Hz以上の音、これをもう一度文章で表現してみてください。
これを私からの課題とします。
一つ条件を付けます。
嶋津亮太さんのことだからきっと大真面目に自分だけで考えて答えを出そうとすることでしょう。それはやめてください。
自分だけの頭の中だけではたどり着かない境地というものが世の中にはあります。
奥さんに訊いてみたり、友達に訊いてみたりしてください。
それを知るための課題といっても差し支えありません。
以上。
ここのコメントを目にしてくれてるってことは最後まで読んでくれたってことですよね、きっと。 とっても嬉しいし ありがたいことだなー