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「2024博士キャリアメッセKYOTO」において博士学生2名が企業賞を受賞しました

 京都クオリアフォーラム主催 2024博士キャリアメッセKYOTO第2部 ~博士学生の今を知る&次世代の高度専門家たちにエールを!~は、博士に対する期待や現状を本音で語りあい、その存在を京都・奈良で盛り上げる場として、京都クオリアフォーラム・人材育成Gのもと、JST次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)に採択された京都・奈良の7大学が連携して企画運営しています。「博士学生を知る」「共に育てる」「交流」「スキルアップ」「社会を知る」の機会として、博士後期課程の学生が自分自身と研究活動をPRする場です。
(開催報告:京都クオリアフォーラム「2024博士キャリアメッセKYOTO」を開催しました

 博士学生のエレベーターピッチとポスター発表に対して、参加者全員がインパクトのあった発表に投票しベストインパクト賞を決定する他、各会員企業が学生1名を選出して企業賞の授与が行われました。
本学からは、植物共生学研究室の菅 咲桜里さん(博士後期課程1年)が「堀場製作所賞」、有機エレクトロニクス研究室のChitlada MANI-LATAさん(博士後期課程2年)が「SCREEN賞」をそれぞれ受賞しました。


右が受賞者、左が山下俊英キャリア支援室UEA・特命准教授(博士キャリアメッセKYOTO コーディネーター)

企業賞:
堀場製作所賞

受賞者:
菅 咲桜里

発表タイトル:
寄生雑草の新たな防除法開発に向けた吸器誘導阻害物質の作用機序の解明

研究紹介:
寄生植物とは、全植物のおよそ1%を占める植物で、他の植物に依存して自身の生育に必要な水分や栄養分を摂取する植物である。
寄生植物は「吸器」と呼ばれる独自の侵入器官を形成し、吸器を通じて宿主植物へと侵入し、自身の生育に必要な水分や栄養分を獲得する。
研究室では、寄生植物の吸器の誘導を阻害する化合物の単離を目的として、およそ10,000種類の化合物スクリーニングを実施した。その結果、新規の吸器誘導阻害物質Haustorium INhibiting Compound 55(HINC55)を同定した。HINC55は、これまでに知られている吸器誘導阻害物質とは異なる構造を持っており、全く別のメカニズムで吸器の誘導を阻害していることが考えられる。
現在、アフリカや東南アジア、地中海沿岸地域を中心にハマウツボ科寄生植物による農業被害が深刻な問題となっている。その被害額は年間1,000億円となっており、早急な防除法の開発が求められている。寄生植物の宿主植物への寄生において、吸器の誘導は必要不可欠な過程である。しかし、寄生植物の吸器の誘導を阻害する防除法はまだ存在しない。そこで、本研究では、新規吸器誘導阻害物質のHINC55の作用機序を解明し、寄生植物による農業被害問題の解決を目指している。

受賞者コメント:
この度は、堀場製作所様より私の研究発表に対し評価していただき、とても光栄に思います。本学に入って初の受賞なのでとても嬉しく思います。今回の受賞を励みに、今後の研究活動も精一杯頑張りたいと思います。


右が受賞者、左が谷口直也キャリア支援室UEA・特命助教(博士キャリアメッセKYOTO コーディネーター)

企業賞:
SCREEN賞

受賞者:
Chitlada MANI-LATA(チトラダ マニラタ)

発表タイトル:
ナノスケール光電子機能計測に基づく有機薄膜太陽電池の動作機構解明

研究紹介:
本研究では、光を吸収して電気に変換する三種類の有機材料で構成された三元有機太陽電池について検討しました。しかし、これらの材料を光活性層内で混合すると、ナノスケールの構造が複雑化し、デバイス性能が制御不能になるという問題が生じます。その効果的なアプローチの一つが光照射型電流計測原子間力顕微鏡(PC-AFM)であり、この手法ではナノスケール表面形態と光電流を同時に取得できるため、形態とデバイス性能の関係を直接調査することができます。私の研究では、ドナーで生成された多数の正孔キャリアが、より有利なエネルギー準位のために、あるドナーから別のドナーに移動することを確認しました。その結果、デバイス性能は一つのドナーによって主に支配されることが分かりました。最終的に、デバイス性能を向上させるため、すべての材料を均等に強化するのではなく、材料間のエネルギー準位差が小さい組み合わせを選択することで、特定の材料による支配を避けるべきであると結論付けました。

受賞者コメント:
このたびは、SCREEN賞を受賞させていただき、大変光栄に存じます。この貴重な経験は、私にとってとても謙虚な気持ちになると同時に、大きな励みになっています。半導体業界をリードするSCREENホールディングス様に、このような栄えある賞をいただき、本当に感謝しています。この賞は、私の研究への取り組みを評価していただいたことに加え、NAISTの指導教授やキャリア支援室の先生方からいただいた多大なご支援と温かいご指導の賜物であると感じております。このSCREEN賞の受賞をきっかけに、私の研究テーマである有機太陽電池において、さらなる性能向上を目指し、努力を重ねるとともに、近い将来、社会に貢献できるよう邁進してまいります。