(第8話) さらば!日常生活 【サポーター目線】
こんにちは、「小瀧真理子(こたきまりこ)」といいます。洋服を作ったり、イラストやマンガを描いたり、レシピを作ったりしています。
今回の記事では、白血病になったパートナー「根本さん」の以下のストーリーと同じ時間を、サポーター視点で書いていこうと思います。
上記の体験記をご覧いただいたあと、こちらを読みすすめてもらえたらうれしいです。
さらば!日常生活 【サポーター目線】
朝からのめまぐるしい時間を経て、とある個室に流れ着いたわたしたち。
いつの間にかストレッチャーに寝かせられた根本さんは、左腕に点滴の管を設置されて、病気の人みたいに見えました。
今朝まで、病院に来るまでは、熱はあるけど病人じゃなかったのに。こうしてベッドに寝かされて看護師さんに大事に扱われているのを見ると、「病院が病人を作るんじゃないの?」と、変なことを思っていました。
マスクを強いられ個室に通され、手洗いとアルコール消毒の方法を教えてもらったあとで何が一番嫌かというと、ベッドの頭のとろこに、印刷された彼の名前があること。なんでベッドに名前をつける必要があるんだろう?点滴が終わったらおうちに帰るのに。
ことの重大さを把握することができず、「白血病って、治るんだよね?」という知識しかないわたしは、根本さんに「大丈夫?」と聞いてみたり、「お部屋からの景色がいいよ」と言ってみたり、「おなかすいた?」と話しかけてみたり。知ってる言葉で安心しようと、変な会話を投げかけていました。
どうやらコトは想像以上に深刻で、「これは医療従事者をも巻き込んだ壮大なドッキリなの…?」という疑いがだんだんと薄れていきました。
「17:30から先生の説明がありますが、一緒に聞きますか?」と看護師さんが尋ねてくださいました。
「どうしようかな…」と少し迷っていると、「一緒に聞いたら?」と根本さん。そうか、聞いていいのかと思い「わたしも聞きます。」と答えました。
ほどなくして先生達が個室へ到着され、説明が始まりました。白血病を簡単に説明すると、次のような感じだそうです。
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本来であれば「敵を倒すために強力な戦士を、立派に育て上げてから戦場へ送り出す」はずが、「ハイハイしかできない赤ちゃんの状態で戦場へ出してしまう」ため、戦力が全くおいつかない状態になってしまうのです。
よって、
「数でまかなえー!数を増やせー!もっと出せー!」と上官が司令を出します。その結果、戦士の赤ちゃんを大量に生産してしまう。しかし戦士ベイビーがたくさん来たところで敵と戦えないので、「もっともっと増やせー!」とさらに増産する、とのことでした。(←この大量の戦士ベイビーが、がん細胞です)
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そしてこれからの生活についても説明を受けました。もはや日常生活なんて呼べないレベルの未来が、薄いカーテンの向こう側にチラつきました。
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明日は手術、管をからだの中に常時装着させておくため。
明後日は精子保存、精子を凍結できる大きな病院へ行く。
週末までには「ちゃんとした病名」がつくように検査を始める。
週明けの月曜日からは抗がん剤。
クリーンルームが空いたら移動、そこに入ったら出られない。
菌を持ち込まないように、気圧と風圧とアルコールで徹底的に管理する。
髪の毛は抜けます、早めに切ったりするといいでしょう。
食べ物や植物の持ち込みも注意してください。
面会は極力少なく、部屋に入る人は専用の防護服を着て、
菌やホコリを持ち込まないように。
シャワーは1ヶ月間浴びられません。
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呆然としているわたしの左手には「入院に必要な物リスト」が書かれた紙が1枚。急いで帰って、ねもとさんに歯ブラシとかパジャマとかパソコンとか届けなきゃ…
よくわからない、でも、やらなきゃいけないことがある。
調べなきゃ。
届けなきゃ。
そばにいなきゃ。
こんな怖いことに一人で立ち向かわせるなんて、絶対にできない。
いったんおうちに帰らなきゃと思い病院を後にし、暗い夜に向かって自転車を走らせました…
つづく...