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【キリスト昇架】ピーテル・パウル・ルーベンス
キリスト昇架(十字架昇架) 1610-11年
ピーテル・パウル・ルーベンス 1577-1640年
聖母大聖堂
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この三連祭壇画はピーテル・パウル・ルーベンスによってアントウェルペンの聖ヴァルブルガ教会の中央祭壇のために描かれた。
信仰に対する情熱を奮い起こすことを意図しており、光と影の活用で、キリストの英雄的な行為が強調されている。
3枚のパネルすべてが一つの物語を描き、中央の一条の光が当たっている場所で、重要な事柄が起こっている。
十字架の対角線が力強い構図をつくり、平行に引っ張られて張ったロープがそれを目立たせている。
聖母マリア(左)は悲しみを抑え、他の女たちは腕を宙に伸ばして、恐ろしさを表現している。
その動揺はひねった手足となびく髪で強調されている。
二人の盗人も同様に磔(はりつけ)にされようとしている。
一人は力づくで抑えられ、一人は十字架に釘で打ち付けられている。
キリストの顔と胴
キリストの姿は三連祭壇画の中心である。
それまでの磔を主題にした絵画ではキリストの肉体的な苦しみが強調されたが、ここでは肉体的な苦しみを出さずに、英雄として描かれている。
筋肉質な胴は古代の神の彫刻を模している。
筋肉
ロープを引っ張る男や十字架をあげようとしている男たちのふくらんだ筋肉は、この絵に動きを与えている。
緊張した裸の写実的な努力が必要なことを力強く語っている。
兵士
ローマの兵士たちが背景で二人の盗人たちを磔にしている。
一人の兵士の警棒と伸ばした腕がパネルで対角線を描き、鑑賞者の視線をキリストに戻している。
力強い馬が前景を大きく占め、そのじっと見つめる目と大きく開いた鼻の穴が恐怖を物語っている。