上野耕平(Sax) / Eau Rouge
「アドルフに告ぐ」という印象的なタイトルのアルバムで、鮮烈な音盤デビューを飾ってから10年近く。サックス奏者、上野耕平さんの4年ぶり5枚目となるソロ・アルバムが、9/27にイープラス・レーベルから発売されました。
僭越ながら、私はこのアルバムのライナーノートを執筆致しました。
収録曲は、上野さんが厳選した、1930〜50年代、クラシック・サックスの開花期に書かれたフランスの名曲・難曲たち。磨きに磨きをかけてきた技術と、ありったけの愛情を注ぎ込み、共演のピアニスト、高橋優介さんとともに楽曲に新しい生命を吹き込んだ彼の姿は、ベルギーのサーキットの難所中の難所、Eau Rouge(オー・ルージュ)を全速力で駆け抜けた歴戦のレーサーたちと重なります。
彼の熱烈なファンのみならず、サックスにはあまり馴染みがないクラシック音楽の愛好家の方々にも是非聴いて頂きたいと心から願っています。掛け値なしに素晴らしい音楽との出会いが待っているはずですから。
例えば、ミヨーの人気曲「スカラムーシュ」は言うまでもなく、クール・ビューティなデザンクロやプラネルの作品は近現代音楽好きにはたまらない御馳走だし、ボノーの無伴奏作品の超絶技巧、デュボワの「ディヴェルティメント」の愉悦、ボザのアリアに漂うそこはかとない哀愁など、聴きどころ満載です。
私は以前、コロムビアのメールマガジンで、彼のバッハ・アルバムと、前作「アドルフに告ぐⅡ」についてご紹介しました。これらも上野さんの妙技と、音楽への真摯な取り組みを存分に味わえるアルバムで、夢中で文章を書いた記憶があります。新盤のリリースを機に、是非、彼の足跡を刻んだこれらの名盤にも再び光が当たりますように。
吹いた。歌った。語った。そして… ~ 「ブレス −J.S.バッハ×上野耕平−」
消え際の美学 ~ アドルフに告ぐII 上野耕平(Sax)、山中惇史(P)、林英哲(和太鼓)
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