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【挿絵あり】№13_召喚術の授業は××な魔物と、 (月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生)の召喚契約ブロマンス

【月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生】の召喚契約を巡る攻防を描く、割と現代的で現実的なファンタジー・ブロマンスです。


 
その後は魔物からこの亜空間の案内を受けた。

東屋と外通路で繋がる白い屋敷へと入り、室内を見て回る。
ダイニングキッチン、洗面所、浴室、トイレ、書斎、図書室…

(どの部屋もだいぶ広いな)
自分の家の倍はある浴室の広さにポカンとしていると、魔物が何やら自慢げに語ってきた。

「ここはお前の居住用にと私が一から作った。快適かつ不便はないはずだ。
 に、っ人間風情にこれほど繊細な気遣いや気品ある住居を与えるなど、お、お前以外ではありえないからなっ」
「は、はぁ…?えっと、ありがとうございます…?」


(えぇ…?こういうのには一体、なんて答えたらいいんだ…?
 それに何か言いづらそうなのは何故なんだ…?)

この白緑の魔物は絶大な力を持つゆえか、思わず傅きたくなる風格と気品を漂わせている。
そんな人物が突如誤作動を起こしたかのように、ぎこちなく話す有様は奇怪で目を引いた。
(何か後ろめたい事でもあるのか?)
時折見せるその様子に僕は不審の目を向けながら、その後ろをついて回った。


最後にお前の自室として使えと、ベッドと机、椅子が置かれた部屋に案内された。
「この亜空間にあるものは自由に使っていい。他に必要なものや困ることがあれば言え。
 私は寛容だから、ぉ、お前からのもっ文句程度で腹を立てたりはしない。」
「…は、はい…」
これはたぶん「何か不便があったら遠慮せずに言え」と言いたいのだと思う。
管理を徹底するために、家畜の声にも耳を傾けてくださるのだろう。

「人間は私のことを、Lと呼んでいるんだったな」
L、聞き覚えのある名前だった。

(…って!
 あの”月桂樹の魔物”の略称じゃっ?!!)
その魔物は魔界の歴史にも名を刻む、古からの湿原の支配者。
まさに伝説級の存在。

(え、う、嘘だろ……。ほ、本物、なのか?!)
月桂樹の魔物は人型もとるという事は判明している。
けれど分かっているのはそれくらいで、真偽を判断できる情報を人間はまだ掴んでいなかった。

(普通なら有名どころの名前を騙っている、と考えるべきだけど…)
だが事実なら納得のいく事もあった。
莫大な魔力、規格外の事象、それに僕が召喚したあの2体の魔物について把握していた事。
たとえ嘘でも、人智を超えた危険な魔物であることに違いはない。

僕が魔物の正体に気を取られている隙に、魔物は何か魔術を使ったらしい。
仕上げに僕の口元を白い指がなぞった。
「契約を結ぶ気になったら、その名で私を呼べ。
 小声でも側にいなくともそれですぐ分かる。」
「は、はい…」
僕の返事を確認した魔物は、ふいっと目を逸らしてから不思議な内容を付け加えた。

「それ以外で呼びだしても、かっ構わないっからな!
 人間風情が遠慮することはない。眠れないとか、さ、寂しいとか…」
「え…? さ、寂しい……??」

(寂しいって言ったか?)
意図の掴めない発言に、僕は戸惑いを隠せなかった。
が、魔物は少し据わり悪そうにしながらも真面目な顔で頷いた。

(………???)
言葉の意味は分かる。だが相手が言わんとしている事に辿り着けない。
コミュニケーションの難しさを、魔界に来てまで実感させられるなんて。
(…そもそも、寂しいからこの魔物を呼ぶなんていう畏れ多い発想を、人間風情がするわけないんだけども…)

「………」
うーん、えーっと、これは、つまり。
積極的に呼んでほしいのか?
何の意味があって?これも家畜管理の徹底のためか?
いや待てよ、もしかしたら単純接触効果を狙った懐柔策の一つかも…

積極的呼出しの狙いを考える僕を、魔物は腑に落ちない顔で見ていたが、
「私は大抵書斎にいる。不在にする時もあるが逃げることは不可能だ。
 せいぜい何が最善の選択なのか考えるといい。ここは人間の世界と時間の流れ方が違うからな。」

と告げ立ち去っていった。
なぜかチラチラ振り返っていたけども。


 
 


今回はここまでにします~
ではまた~ 

この【ブロマンス版】№13の続きは、【BL・ブロマンス共通】№15になります。↓↓↓


1話目はこちら



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