近所の食堂で
気になっているメニューを、やっと注文することができた。
これまで何度か食堂のおやじさんに注文したものの、その都度「気が乗らない」とか「手首が痛いから」とか理由をつけて断られていたのだが、「今日は久しぶりにやるか」と言ってくれた。
注文したメニューはA不定食(980円)というメニューで、壁に張られたお品書きに小さく赤い字で「料理の内容は定まっておりません」と書いてある。
おやじさんに時間かかるよと念を押されたが、どんなにかかってもいいからと言うと、「その場その場でね、考えながらつくってくからさ、こっちも大変なわけよ」とぽつぽつ語りながら調理している。
おやじさんは腕組みをして天井をみながら小声でブツブツ言っていたり、片手で掲げたキャベツを見て首をひねったりと、手を動かしている時間よりも考えている時間のほうが長いようだった。
B不定食(1,000円)というのもあったのでどんなものかと聞くと、「そりゃあ、何かが違うんだよ。Aと、Bなんだから」と納得しづらい答えが返ってきた。
待つこと40分、出てきたA不定食は、薄味の豚肉の生姜焼きのたれのような味のおつゆと鰹節がたっぷりかかったご飯と、日本酒の匂いがする湿った海苔、キャベツの千切りに白胡椒がかかったものに、梅干の入ったソーダ水というものだった。