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人混みの中を歩いていて

何かが違うなと思ったら、いつも見ているはずの人々の後頭部がなくて、視界が開けていた。

ああ背が高い人はこんな風に見えているのか、いやでもこの歳になっていきなり背が伸びるはずもないし、なんなんだろうと思いながら蕎麦屋に入った。

暖簾をくぐるときも妙な感じで、注文したざる蕎麦を口へ運ぶと、二人羽織をしている様でなかなか上手く食べられず、顎や鼻の下に麺を押し付けてしまう。

一週間ほどそんなことが続き、考えた結果、空腹時に自分の視点が20センチほど上昇するらしいという結論に至った。

自分の背丈が伸びているのかと思い、壁に印をつけて身長も測ってみたのだが変化はなかった。

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