連続リフレ小説 「リフレ交差点」 お客さまファイル1 25歳男性①
【はじめに】
この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
ナイトビジネスに関する描写がありますので、苦手な方はお避けください。
②③は有料記事の予定です。
2024年4月26日(金)
高山は、GW直前になって彼女から別れを告げられた。
彼女ーーーいまとなっては元彼女だが、元彼女とは大学時代から5年ほど付き合ってきて、最初で最後の彼女になるだろうと高山は思っていた。
別れの理由は高山の多忙という、ありきたりなものだったが、高山としては結婚を見据えて仕事に打ち込んできたつもりでしかなく、大学卒業後非正規雇用でどうにか食いつなごうとしていた彼女を支えたい一心だった結果が、簡単なLINE2往復のあとSNSはすべてブロックされてあっけなく音信不通となったことに、納得できる日は来ないのではないかと感じていた。
祝前日の金曜日ということもあり、定時後すぐからずっと居酒屋で話を聞いていてくれていた係長の谷口は、高山の機嫌が収まりそうにないことを察しつつ、口を開いた。
「あのさ高山、とりあえず彼女?元彼女?に今これ以上連絡したりしちゃだめだよ。大学時代の友人に助けてもらうにしても、今じゃない。」
「谷口さん、わかってますがこのままぼくはゴールデンウイーク中、家でずっと泣いてると思います。」
「だよな高山、そうだよな・・・じゃあちょっと連れていきたいところがある。気分転換しよう。」
「谷口係長・・・ありがとうございます。でも、キャバクラや風俗はいやです。彼女と再会できたときに、後ろめたくなるのはいやなんです。」
「分かってるよ高山、そんなお前にぴったりの遊び方があるーーーJKリフレだ。」
居酒屋の会計は、先輩で役職のついている谷口が7割、4年目になる高山が3割という、いつもの比率で千円札を払いあって済ませた。
高山は、谷口についていきながら埼京線に乗り込む。外国人旅行客だらけで、女子高生は近くにいないことを目で確認しながら、谷口に質問した。谷口はスマホでなにやらLINEをしている。
「JKリフレ?あの中高生がいかがわしい行為をして摘発されまくったあれですか?」
「まあ、厳密にはちょっと違うが、そういう時代もあったな。現在は、まあいろいろ流派が乱立しまくっちゃっていてややこしいんだけど・・・アロマエステの素人版みたいなところならお前もかまわないだろ?」
「内容次第だと思います。とりあえず、女子高生に肩でも揉んでもらえばいいんですか?」
「まあそうなるな、でも、今日行く店は実際の女子高生じゃない。あくまでコスプレだ。」
「そりゃぼくだってそのほうが安心ですけど・・・聞かされるとなんかがっかりですね。」
「なんだ高山、乗り気になってきたじゃないか。もうすぐ池袋だ、降りるぞ。」
池袋東口から地上に上がり、こなれた足取りで谷口は大型家電量販店の裏路地へ向かう。
高山は以前、飲み会を池袋東口の歓楽街エリアで予約してしまったことがあり、女性陣からひんしゅくを買ったことを思い出していた。
「谷口さん、結局JKリフレって何なんですか?」
「とりあえず、お前には体験入店3日目のメグちゃんに来てもらうことにしたから、メグちゃんが理解している内容で遊んでもらってくれ。さっきの会計3千円分とお前のメンタル回復を願い、1万円札にして返してやる。茶と差し入れのミルクティーもおまけだ。」
谷口は財布から1万円札を取り出して高山に渡した。谷口の財布からは千円札が何枚かはみだしていたが、1万円札は多くてもあと2,3枚だろう。
そのまま谷口は路地の自動販売機で、ペットボトルのお茶と缶のミルクティーを2本ずつ買い、めんどうくさそうに高山へ1本ずつ受け取るよう促した。
「谷口さん、ありがとうございます。怖くなったら、逃げてもいいですか?」
「まあ最初はそうだよな・・・全然怖いところじゃないから、それくらい警戒しておいてくれ。」
背中越しに返事をした後、谷口はマンションなのかビジネスホテルなのかよくわからないビルの中へ入っていった。
「真ん中グレード90分、後ろのやつとで1部屋ずつ。」
「かしこまりました、4,000円です。」
レジ打ちをしながら受付の男が答える。谷口はGW料金なのか確認したかったらしくぶつぶつ受付と会話していたようだが、高山には会話の内容がよくわからなかった。
大学時代に元彼女と異様に緊張しながら入ったラブホテルとは違い、ずいぶん明るいのでビジネスホテルのように感じた。
祝前日とあって、若い女性と中年男性の2人組や、黙ってエレベータに乗っていった中年女性などが狭い受付通路を通り過ぎた。
「じゃあ高山、6階でエレベータを降りたらお別れだ。気に入ったらもっと現金を渡してイチャイチャしてもいいし、気に入らなければお釣りは今度の居酒屋で多く払ってくれ。『残りのお釣りでできるところまで』って言えば、いっぱい気持ちよくしてもらえるぞ。」
「それって怪しい遊びじゃないですか。ぼくはいやですよ。」
「まあ、今日はおたがい現地解散だ。連休明けにでも聞かせてくれ。酒飲んじゃってるから、歯を磨いて茶を飲んでおけよな。」
高山の理解が追い付かないうちにエレベータは6階に着き、谷口から渡された610号室の鍵を使って610号室に入室した。
<②へつづく>