糖尿病の治療
※以下の内容、最後に研究の経験談をはさみましたが、無視していただいて構いません。他の内容で、いきなり読むと難しいと感じる方は、記事の「自己紹介」や「糖尿病について」も、ご参照ください。
糖尿病に対して、様々な事情により、十分な予防や対策を打てない方も多いと思います。自分も、医者の不養生を体現してしまったことを後悔しています。医学は、予防よりも治療に重心がある科学ですので、診療中に考えることも診断と治療が中心です。博士を取る際も、動物実験でしたが、どのように治療するかを考えていました。一般に、糖尿病に対しては、服薬やインスリン注射が重要な選択肢となります。
①内服
安価で有能な血糖降下薬と言えば、メトホルミン、メトグルコです。アメリカでは第一選択となるほどですが、日本人は体格や体質も異なるため、そうとも限らないと思います。今では、この他にも、沢山の種類の服薬があり、専門医による適正な使用が推奨されます。
②インスリン投与
インスリン投与は、注射や、機械による持続投与がありますが、導入前に、自身のインスリンを出す力がどれくらい残っているか、評価が必要ですので、やはり、専門医との相談は必要になりそうです。導入後は、低血糖リスクがあるため、血糖値を把握しなければいけません。いずれも、内服に比べると、煩雑で手間は増えると思います。最近、週1回の注射製剤も処方されるようになりましたが、glucagon like peptide(GLP)-1といって、インスリンではなく、インスリンの働きを助ける薬ですので、知っておくと良いかもしれません。インスリン製剤は連日注射でないと持効型であっても効果は不安定ですし、種類によって(例えばトレシーバ)、どんなに間隔をあけても隔日注射は必要となります。
③移植と遺伝子導入
そこで、細胞移植は、膵島であれ、間葉系幹細胞であれ、代替の治療法となり得ますが、費用やドナー不足などが問題となります。糖尿病のターゲットである、膵臓自体、細胞が生着しづらい環境であるため、移植方法も課題となります。また、遺伝子導入(ウィルスなど介して、対象の細胞に特定の遺伝子を組み込む)は、導入する遺伝子次第ですが、動物実験で有効と思われた遺伝子が、他研究者によって反駁されたりなど、一定した結果を残せていない印象がありますし、導入方法との組み合わせや、ヒトで安全性高く結果を残せるか不安はあります。膵臓は、主に消化酵素を出す外分泌細胞や、分泌物を通す導管など、ベータ細胞以外の細胞が90%以上を占めますが、これらの細胞からベータ細胞への変化(分化)を促す、neurogenin3などの転写因子が導入の候補となっています。
④空腹
一定時間の絶食やプチ断食も、様々議論されてますが、費用対効果としてはありかもしれません。ヒトの体の反応、生体反応に委ねるため、個人差については、かなり大きい選択肢と考えます。結局、悪化の予防、生活習慣是正の要素があります。正しく実践し、継続する、理解力と精神力が必要です。
⑤治療の結論
他生活習慣病と同様ですが、糖尿病自体は、合併症を除けば、血糖が高くなったのみの状態であり、症状もない場合が多く、どこまで施すか、常に悩ましいです。簡便な方法で都合良く是正することが、難しい疾患かもしれません。今時点では、生活習慣是正、内服など伝統ある方法で悪化なく努めることが、正攻法と言えます。
糖尿病も、管理不良が続くと、心筋梗塞(心臓の血管が詰まる)、脳梗塞(脳の血管が詰まる)、足が腐ってしまう、腎不全(小さい血管が傷つく、尿を出せない)、大腸癌、網膜症(小さい血管が傷つく)による失明など、致命的に近い状態となります。これら合併症に対しては、血糖管理だけでなく、カテーテルによる治療、切断なども含む手術、透析、抗がん剤、網膜症へのレーザーなどで、致命的な状態を避けるための治療や処置等が適応されます。
自分含めて、誰しも言えますが、いつかは、合併症各々、生活習慣や体質に紐づく、あるいは長寿に伴い、発症する癌などの疾病(糖尿病由来に限らず)や、老衰から心不全や誤嚥性肺炎を繰り返すこと等で、最期に向かっていきます。その際に、前述の治療が上手くいかなければ、いかに余生を楽に過ごすかが重要となります。その段階では、診断や治療よりも、辛い症状をどこまで取れるかが、医療面で、最も影響しそうです。
年齢により段階的に、誰しも保険で高額な治療を受けられることが難しい、保険であっても費用がかかる、高額医療の上限によるサポートが受けられなくなる、あるいは部分的となる等、負担増から、治療の選択が限定されてしまうことも、これからは想定しないといけないかもしれませんので、安価な割に効果的な治療、あるいは症状緩和できる服薬などの手段は、検討しておくべきと考えます。
次回以降は、医療記事についてはしばらく休み、教育や学習についての記事を書いてみます。
・研究の経験談、上記③を受けて
ここから先は
¥ 1,000
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?