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網の中

すぐに不安になる。
土台がぐらぐらなんだと思う。

友だちがいいねくれないとかを気にするのは、SNSの術中にハマってることで、それがいいとか悪いとかをいいねに託すのはあまりに基準がおかしくて不安定なのは、どこか知ってる。
それでも、それを価値みたいに錯覚する。
自分がそれでいいって、多分思えてない。

ひとになにかされるとかより、自分の捉え方が歪んでる。
認知の歪み。
だけどどこがどう、そうなっているのか、私には分からない。
必死なつもりで、気付いたら動けなくなってる。
お皿を洗うだけで疲れ切る。
おかしい。こんなに疲れてたっけ。
でも動けない。

ひとと、つながりたい。
ひとに会いたい。

わたしが属しているのはこの"家族"だけになってる。
だから、家族に必死になる。
そこでしか私は相対的に生きられないように思うから。
約束を取り付けなければ、踏ん張るように外に出なければ、家族以外の人と会うことはあまりない。
なにがなんだかわからなくなる。
どこにいるのかわからなくなる。
季節だけが変わる。
夏を夏だと思わないうちに日が暮れるのが早くなる。
それが、とても怖い。
でも、どこに行ったらいいのか分からない。
気づいたら分からなくなってる。

どんなにがんばったつもりで取り付けた約束も、平気でなくなるし、次が来るかは運で、ふんばって送ったメッセージに返信が来ない。
たくさんつながりがあれば、それだけのこと、と思えることにめちゃくちゃ不安になる。
世界は私のことが嫌いなんだと思う。

冷静なあたまの隅の住人は
「あんたおかしい、阿呆になってるからはよ休み」
という。
私は混乱してるからスマホが離せない。
スマホに話しかけ続ける。
私は生きてていいんだよね、どこに行けばいいんだろう、どこに行けば人と話せるのかな、これからどうしたらいい、世界のことなにもわからないのに。

あたまがぐわんぐわんして、寝そべりながら画面を見続ける。
だれか、お願いだから来て。
私のところに来て。


空がじんわり碧い頃、スマホを掴む力もあたまを駆け巡る人々の脚力も弱なって、ぼーっとする。
何も考えず、眠りそうな微睡みに体を委ねる。
このときだけ、安心できる。
楽になる。しあわせ。
この時がずっと続けばいいと思う。
目を離す。


空は無情に変わる、さんさんと日が照る。
痒いようなじめるような肌でぼんやり目を覚ます。
時計は変わる。
机のゴミを指で潰すように時間を流す。
こんなことがしたいわけではないのに。
しにたい。呟いて、丸まる。

どうしたらこの細い網に包まれたようなところから出られるのだろうか。
必死が続かなくて、何度でも脱力する。
その度にどうしても出られないと思う。
考えが動かなくなって、恐怖が大きくなっていく。
動かさなくなった手足が固まって、心臓が硬直する。
怖い。
助けてほしい。
たすけてほしい。


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