憧れのフランス🇫🇷Longchampで、流れた走馬灯
今から3年前のことである。
私は昔からフランスに憧れていて、いつか絶対に行きたいと思っていた。
でも言葉が分からないし、長期休みとれないしな、、、、なんて思って先送りにしていた。
しかし、長年の友人がイギリスで数年働く事になり、ひょんな事から転職も決まり、それまで有休消化できる事になり、
“心強い現地の友人”と、”長期休み”という、とんでもなくハッピーなセットが現れので
行くことにした。
まずヨーロッパにと、友人にイギリスにいきたいと伝えると、親切なことに、「他にもどこか行きたい所はある?スイスとかベルギーとか近くだから、行けると思うよ!」と返してくれので、
「フランスに🇫🇷行きたい。」
と伝えた。
「よし、行こう!」
二つ返事で、彼女は、仕事の中、ホテルやチケットなど、全部手配してくれた。
感謝の気持ちでいっぱいであった。
ちなみに欲しいものを聞いたら、彼女からは、予想外の
「日本のカップラーメンが恋しい。」
という言葉が返ってきたので、わたしはイチオシの日清のカップラーメンをいくつか買い、意気揚々とイギリス行きの飛行機に乗り込んだのであった。なんかわらしべ長者気分だった。
フランスでの私の目的は、ずばり
“フランス限定のLongchampのトートバックを買うこと”
というのも、実は少し前に台湾で、現地限定のLongchampのトートバッグを買った私。普段絶対に買わないカラーだったが、一緒に行ったオシャレ友達に「似合うよ!」と言ってもらい、
現地にしかない、かつ、普段買わないカラーに、すごい魅力を感じて、買ってみた。その結果は大成功。
「人と被らなくて良いね!」
「その色、普段のあなたになくて似合ってるね!」
と言われ、そのバッグは私のお気に入りになった。
それから旅の思い出に一品!にハマった私は、今度は、フランス限定のエッフェル塔が、ばーんと入った、デザインのバッグを買う事に決めた。
イギリスに着いてからは、たくさん観光に連れってもらった。彼女が仕事の日は、1人で色々と出掛けて満喫した。そして、ついに待ちに待ったフランス出発の日。我々は電車で移動した。
寝ている友達を横目に、スリに合わないかドキドキしたり、ワクワクしながら電車に乗って、ついにフランスに到着。
憧れの、憧れのフランス。
感動だな、、、と思いきや、第一印象は、
町きたなっ!
であった。街中に、自由にゴミが落ちていた。日本のゴミ一つない道に感動する外国人の気持ちが、なんとなく分かった。
私がポカンとするその間も、友人はさくさくと携帯でバスを探し、案内してくれた。そして我々は超スムーズにパリを歩いた。まるで、現地人になった気分である。私は、携帯も見ずに、少しドヤ顔で町を歩いた。
本当にフランスパンを片手に持って、街を歩くフランス人に感動したり、オペラ座の怪人の席を見たり、
フランスにいるんだ!
その嬉しさを、ただただ味わった。
途中、友達はスリに鞄を開けられたが、すんでの所で気づいてセーフだったり、2人して署名詐欺集団にも追いかけられたが、ジェントルマンなおじさまが、鳩を追い払うかのようにさっと追い払ってくれた。去り際にウインクしてくれて、それは素敵な想い出に変わった。
そして、フランス2日目。我々は凱旋門に向かっていた。
有名な観光名所。
しかし町の様子が、どうもおかしい。
「何か周りの店全部閉まってない?」
「町、人いなくない?」
凱旋門といえば、観光名所なのに、なぜかその日は人がいなかった。町が台風に備えてシーンとしてる感じ。
気になりつつも進む、、、。
「あの店、ガラス割れてない?」
なんと、目の前のお店のショーウィンドウのガラスが、パリパリに割れていた。
そこで知ったのは、我々がパリに行ったのはちょうどデモの真っ只中。フランス人は自己主張するお国柄か、よくデモをするらしい。そして、その時のデモは、大規模で、デモに便乗した関係のない者が、店を燃やす、ガラスを割る等も多く発生していた。
また調べると、デモ隊は今日なんと凱旋門をゴールにして、そこでデモをする事がわかった。こちらに向かってきている、、、。しばらくすると、爆竹音も聞こえてきたので、
「来る前に、引き返そう!」
我々は急いで逃げることにした。しかし、歩いていると、なんと、
目の前にLongchampがあった。
しかも、Longchampだけ開いてた。
普通に考えたら、こんなデモの中、何かあったら危ない。ここは我慢だ、と行かないところである。
なのに、私は吸い寄せられるように、Longchampに入っていった...
まあ凱旋門からも少し離れたので、ここは大丈夫だろうと思ったのだ。(ちなみに友達は、あっ行く?いいよーとあっさりであった。)
フランスの、憧れの、Longchamp。デモの緊張感と、Longchampのドキドキがミックスして、味わったことのないドキドキである。
2階へ進む。目の前に、私が求めたあの柄が飛び込んできた。フランス限定のトートである。エッフェル塔がどーんと書いてある。
早速鏡に向かって、持ってみた。
テンションあがるかな。ドキドキ。
、、、あれ??
何か似合わなくね?
鏡の前には、ドーンと柄が入ったバッグに、不釣り合いな薄い童顔の私が立っていた。
なんかバッグ負けしてる気がする、、、。
でもここまできたし、何よりデモの中入ったんだぞ。何とか買う理由が見つけたくて、私は自分に似合うように、そのトートを見ようとする。
うーん、、、。
、、、友達に聞いた。
「これ、どう??」
「うん、ダサいわ。普通のが良いと思う。」
彼女は、名古屋弁のイントネーションでバッサリと言ってくれた。フランス限定につられ、帰国しても二度と使わないであろう、私の未来を見透かしたかのように。ありがとう。
そして、その後、友達に見てもらい、代わりにカーキ色のトートを見つけ、無事私の私へのフランス土産が決まった。店員さんにカーキと書いた購入カードを渡され、1階レジへ向かった。
その時である。
1階の正面玄関の外から、男性が大きな椅子を振り上げ、玄関に思いっきり振りかざした。
男性と私はちょうどガラスを挟んで、向かい合う形であった。
バリーン!!
けたたましい音で、ガラスが割れた。何度も何度も男性はガラスに椅子をぶつけ、店員さんが叫び声をあげる。
あっやばい、死ぬかも。
私の頭に走馬灯が流れた。死にそうになる前って、走馬灯は本当に流れるんだな。
友達、おとん、おかん、ごめんなさい、、、私がLongchampに行きたい我を通したばっかりに。
そんな思いが駆け巡る。
店員さんの案内で、地下の部屋に避難した。
その間も割って、中に入ってこられたら、どうしよう。そう思いながら、逃げ、地下の部屋に鍵をかけ、店員さん達と一緒に息を潜めて隠れた。
店長らしき人は泣いていたが、こんななかでも店員さんは、あったかかった。
「大丈夫?」
「ようこそ、パリへ」
なんて代わる代わる私たちの様子を見に来ながら、笑顔で飲み物を出してくれた。
時間にして、1時間ほどだが、数時間たったような気持ちであった。
少し外の様子が落ち着いたので、
「今から外に出るぞ!」
店員さんから声がかかった。
「これからどこに行く予定だったの?」と聞かれ、友達と正直に言うと、
「そんな危ないところはダメ!」(またデモのところだったらしい。私らどこまでデモに向かっていくんや。)「途中まで一緒に来なさい!」と、言われ店員さんたちと途中まで一緒に帰った。皆、プライベートバッグも、Longchampで、友達とちょっとほっこりした。
外は煙がすごいので、緑のハンカチのようなものを渡され、口を塞ぎながら皆で移動した。
そして、安全なところまで来て、店員さんたちとは笑顔で手を振り別れた。
すごい1日だった。真黒い煙と叫び声と。けれど、デモから離れると、また街は普通に見え、私たちはみかんのフレッシュジュースを飲みながら、また町を歩いた。
ホテルに帰って、本当にすごい1日だったね!と友達と言い合った。ふと、携帯を見ると、
私たちが店を出たすぐ後、あのLongchampは放火されていた。
「ちょっと違えば本当に死んでたかもね。」
Longchampの思い出として、私は帰国後もそのカーキと書かれたカードと、カーキ色のハンカチをずっと持っていたが、それも数年経ち、いつの日かなくなっていた。
でもこの想い出だけは、ずっと忘れないだろうな。
フランスといえば、なによりもこのLongchamp事件。
今度久しぶりに彼女と会うから、その話をしてみようかな。
多分、笑いながら、話せる気がする。