住処を自分の手で。
わたしがアトリエをお借りしているCo-coyaは工事の真っ最中。
60年前に建てられた文化住宅をリノベーションして再活用する試みをしている。
管理人で設計士の関口さんは、震災で建物が瓦礫になった時に「現代建築の最後はゴミにしかならない」と聞き、環境負荷の少ない素材や工法でのリノベーションを選んだ。
新築を低予算でスピード優先で、後先考えず建てる。空き家が全国的に問題になっている今。 そんな住宅が増え、最後は埋め立てゴミになるだけだとしたら。
自分の家や、目にする街の建物の行く先、何十年後のことを真剣に考えるひとがどれだけいるだろう。少なくとも、わたしは考えたことがなかった。
10月は、工事中の一階で、だれでも左官仕事を体験できる日が設けられた。
左官屋さんに教えてもらいながら、木擦り(漆喰など塗料を塗る前の仕立て)づくり。なれないトンカチと釘を使って打つ。
漆喰(南部角又という海藻を混ぜる)のうえには、土壁を塗る。
元の土壁をはがしたものをふるいにかけ、小石などを取り除き、三回沈殿させ不純物と分けたものに材料(藁すさ)や、左官屋さんが保管していた土を混ぜる。
コテを使って塗っていく。
土を触ると、眠っていたような感覚や気持ちが蘇る。
どんな生物が生きて、この土を踏みしめ、分解され、この姿になっただろう。
いつか壁が塗られた日のこと。
見えない過去、つながりに思いを馳せる。
その上には、ご近所の田んぼの藁を叩き、切ったものを割れ防止に埋め込む。
まるで、洞窟壁画、抽象画のよう。
こうして、手間も時間もかかることを、丁寧にたのしく。
集まった、みんなで進めていく。
♩藁ってよ〜♪君のために〜♪(突然のさだまさし)
試行錯誤しながら自分の手で塗った壁は、とても愛おしいものに思える。
住環境をつくる。その素材に目を向ける。
日々の生活、人生、命を過ごす空間。どんな考えで付き合うのか。死後や、離れた後の行き先は。
知らぬ間にそこかしこにあるハードルで、考える暇さえ、なくしているのかもしれない。
けれど、難しいことはきっとなにもない。
左官屋さんが 「自然素材が、かっこいいとか、贅沢品であるのではなく。なんか気持ちいい。それでいい。それを感じてほしい。空気みたいなもの。」
そんなことを、言っていた。
生活から。衣食住から。
もっと心地よいもの。気持ちが良いってどういうことなんだろう。
この左官仕事を通して。考えることできて幸いと思う。
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