PASSION ~涙をこらえた数日間~
エクアドルからペルー・リマに戻った私。次の旅へ出なければならない。
ボリビアを目指す日が近づき、Tさん夫妻のもとを離れていた私は、日本人が営む宿に宿泊していた。翌朝、コンビに乗って日秘へ向かった。
「懐かしい」
コンビに乗るのを恐がっていたのはわずか一ヵ月前。それが今は、リマで触れたもののすべてを懐かしく思っていた。
この日は火曜日だった。日秘の神内先駆者センターに行こうと決めていた。センターに来る高齢者とボランティアは曜日ごとに決まっている。私はこれまでに二度、火曜日にセンターを訪ねていたのだ。
リマを経つ前に、センターで出会えた人たちにもう一度会っておきたい。
日秘に着き、さっそくボランティアの人たちに挨拶をする。エクアドルに行くことは伝えてあった。私を発見したとたん「お帰り!」と抱きしめてくれた。
「エクアドルはどうだった?」
「暑かったです。充実した滞在でした。私、リマに戻って来た時に“帰ってきた”って思えたんです。それが嬉しくて…」
「そう!ずっとリマにいたらいいのよ」
センターのおじいちゃん、おばあちゃんも私のことを覚えてくれていた。
「他の国になんかいかないで、ペルーにずっといなさい」
そんなことまで言ってくれる。
ボランティアの人たちは笑顔を絶やさず、高齢者、いや先駆者たちに優しい手をいつでも差し伸べる。ペルーの日系社会の礎を築いた先駆者たちは、年を重ねた人だけが持つ優しい笑顔を見せてくれた。
大森さんには、これでもかというほどお世話になった。大森さんがいなければ、パドレにも会えなかった。エクアドルにも行けなかった。感謝という言葉では尽くせない。
「またペルーに来てね」
「はい、また来ます!」
エクアドルで楽しい時間を共に過ごしたジェニー、サオリ、ギセ。次なる旅の出発前夜、日本食レストラとカラオケに出かけた。
深夜までカラオケで盛り上がり、サオリの旦那さんが車で送ってくれた。別れ際、切なさが募る。みんなとギュッと抱き合えば、トクンと胸に響いてくる。
出会えて良かった。
またここに来るって、何度も思った。
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