三回目の春。アースデイへ。
大好きな風景・景色のある場所があるということが、とても幸せなことだと思える。
ピイィィィィィ ヒョロロロ…大空はばたくトンビの姿、
ゴォォォォ…海原で漁船が浮かぶ姿と響くエンジン音、
ガサガサと小動物の立てる音。
季節ごとに移り変わる様々な植物の様相、木漏れ日、受ける風…青空と穏やかに広がる瀬戸内海。
高松市庵治町。
この場所が私は大好きで、オノさんに出会えるたび、嬉しくなってしまう。
オノさんに初めて出会ったのは2020年4月。そう、世の中がコロナで騒ぎ始めたころだった。
オノさんのいつも変わらぬ青い作業着と麦帽子姿。
コツコツ植物の手入れをされる姿、やさしいまなざしに心底尊敬と、出会えた歓びを感じる。
この場所へは定期的に訪れて、オノさんと交流してきました。
さて、今年の桜開花は早かった。山桜があちこち花開き、山が「いちごミルクかき氷」の色になった。
おにぎりのような小山があちこちにあるのが香川の特徴で、山がこのピンクになるのを見て「今年も春が来たな」と実感するし、香川らしいなとすごく思う。
そしてすぐ数日で、平地でも桜が咲いているのを目にした。
「あ、あの木、満開だ…」
ってことは、もうオノさんのところでも桜、咲いたかも!
月曜、火曜と青空を待っていたけど、2日ほど花曇りで、3月30日水曜日は朝から青空。
「今日しかないな」
翌日から実家のある埼玉に帰省するため、戻ってきてオノさんのところに行っても散ってしまってるだろな。
ということで、30日、仕事を終えて14時半すぎ急いで庵治へと車を走らせた。
階段を駆け上がって…山に入る手前のトイレでオノさんが。
「あ!今日もお疲れさまです!!」
大きなソメイヨシノの木は、咲き始め。5分くらいだっただろうか。
先へ。道中、チューリップや他の花々も咲いている。新芽が命の強さを示す。
屋島が望める付近の桜はすでに咲き誇ったあとだった。うわぁ~遅かったか。山頂はどうだろう。オノさん、桜の木を移していたものね。
あ、咲いてる!!
それは美しい桜の木。
小豆島行きのフェリーがちょうど行き交う時間。
この眺めは本当に最高だな…。
そういえば…いつからだったろう。
山の道中にいくつか設置されていたゴミ箱が消えたのは。
山道を戻り、オノさんに再び遭遇。
ゴミ箱に話題を向けると、オノさんの表情が曇った。
「庵治町が合併する前からね…設置して、この場所を楽しんでもらえるようにしてきたのに“家庭ごみが捨てられているから”との一言だけで撤去されてしまったの」
「コンビニでお弁当を買うことだってあるでしょう?ここでお弁当を食べてビニールに閉じてゴミ箱に入れる。それが家庭ごみって…。そりゃあ今まで中には家庭ごみを入れてしまった人もあるかもしれないけども、それを、めったに訪問しない行政職員が”家庭ごみが捨てられている“と判断して、紙きれ一枚貼っておしまい。撤去。十数年前にね、歩く人のためにゴミ箱を設置してもらって、僕はごみ箱のこともよく知っているのに…だから怒ったの」
もちろん、行政の側も何かしらの単純ではない背景があってのゴミ箱撤去だったとは思う。けど…
この道を、気持ちよく歩いてもらいたいから。
散歩してもらいたいから、楽しんでもらいたいからという気持ちからゴミ箱の設置をお願いしたオノさん。
そんな純粋な思いが痛いほど伝わって、私も胸が痛んだ。
ほんとうにオノさんは庵治を愛していて、この山道や景色を大切に思っているのだと、改めて感じたエピソードだった。
私の一眼レフを見て「花たちも“きれいに撮ってもらおう”ときれいに咲きますから、また来てくださいね」。
アースデイーそれは…オノさんの82歳の誕生日。もうすぐ来る。