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「胃袋を掴ませないで」—先週もっとも読まれたDearMedia Newsletter [2020.2.17〜2.21]

こんにちは、ディアメディアの味岡です。

ディアメディアでは、私が毎朝目にしている約1,000記事の中から、「ちょっと気になる情報」「最近話題のニュース」「面白いできごと」をピックアップして毎朝お届けしています。

先週は、
・猫の舌デバイス
・ 番外編:質問にお答えします
・胃袋を掴ませないで
・ アイスクリーム博物館
・ 言葉の壁の乗り越え方
をお届けしました。

この中で、先週もっとも読まれたニュースレターの全文をご紹介します。

胃袋を掴ませないで—2月19日配信

「イエス、フォーリンラブ」の締めゼリフで人気のフォーリンラブのバービーさんは、趣味がインド哲学だったり、本棚に『刑事司法とジェンダー』があったりと、コントで見せてくれる一面とは違った魅力を発信し始めています。

そこに注目したFRaU web編集部が、バービーさんの秘められた価値観や思想をもっと聞きたい、広めたい、という思いで月一回の連載をオファーしました。

実現した連載第一回目は、バービーさんのストレス発散法のひとつである“料理”が、女の武器として見られることについてです。

男性の前で料理好きを公言しなかったというバービーさん、その本音は、どのようなものだったのでしょうか。

SNSで共感のコメントと共にシェアされた記事を今日はピックアップします。

#MeTooも #KuTooもなかった数年前、ビジュアル系バンドの男性と合コンした際に好きな女性のタイプを聞いたら、
「ハンカチを常に持っている女の子」と答えた人がいて、それに対し、
「手を拭くのでさえ女性に任せるほど身の回りの世話を全部押し付けるのを愛だと思っている。こいつの愛、歪んでる!」
と思ったバービーさん。

バービーさんは料理が趣味で、おやすみの日は、一日の大半をキッチンで過ごすそう。

野菜を切っているときの規則的なリズムや、鍋の中で沸騰した泡をただボーッと見ることで癒され、この無心になれる瞬間にアイデアや言葉が溢れ出してくると言います。

この料理の時間が、バービーさんのリラックスできる好きな時間なのですが、「私、料理が好きなんです」と素直に言うことが、シャクに触る時期がありました。

「料理できる?」と上から目線で聞かれたり、それに答えるほうも、得意料理エピソードを一つや二つ用意していたりもして、男女のこの手の会話を目の当たりにするのにうんざりしていたそうです。

どうしてそんなに料理の話題に固執していたかというと、その話題の奥には
「キミは俺の身の回りの世話がちゃんとできるのかい?」という、男性からのメッセージが隠されているように感じていたから。

頼んでもないのに、パートナー候補として勝手にジャッジされているような居心地の悪さを感じていたそうです。

そのようにこじらせたバービーさんは、
『いい感じになった異性に手料理を振る舞わない』
『料理の話題が出たらはぐらかす』
というルールを課していました。

そんなある時、良い雰囲気になった男性に、玄関先まで送ってもらったことがありました。

別れ際にごにょごにょと何か言ったので、「は?何?聞こえない」と言ったら、じゃあねと帰られてしまいました。

ドアを閉めるなり、同居していたルームメイトが飛んできて、
「なんで逃したんだ!」
と怒られました。

何のことかわからなかったバービーさんは、彼が「ここで朝、味噌汁を飲んでいこうかな」と発言したという事実を、盗み聞きしていたルームメイトから知らされます。

「チャンスだったのに〜!」と悔しがるルームメイトに、「お味噌汁飲みたい?コンビニでカップのやつを買ってくるってこと?」と、さっぱりピンと来ていないバービーさん。

ここに泊まっていきたいという意味だと理解するのに、ルームメイトと8往復くらい会話が必要でした。

この味噌汁のエピソードはバービーさんにとって、腑に落ちないエピソード代表格になりました。

仲間からはよく、せっかく自炊しているんだから、
「もっとSNSに載せなよ!」
「料理のお仕事来るかもよ!」
とアドバイスをいただくそうですが、
「女芸人が料理上手って、あるある過ぎてしんどくないっすか?」と
それらを一蹴してきました。

「しんどい」の意味は、よく使われる「胃袋を掴む」という言葉への反発でもあります。

「綺麗でもなくスタイルも良くない子は、(モテるためには)胃袋を掴むしかない」と言われているようで、それはつまり、
「あなた(男性)にとって都合良い女でいるから側にいさせてください」というスタンスを強要させられているように感じ、それが嫌だったということです。

女友達とお茶をしていたときに、
「お料理上手なことをなんで隠すの?」
と聞かれ、

「私は18歳で一人暮らしを始めて、生活のことをなんでも努力してきた。苦手な掃除も本を読んで学んだし、力仕事だってDIYだってやる。なのに、男の人は未だに不向きだからという理由で家事をやらないじゃない」

と、止まらなくなってしまったバービーさん。

自分の努力が、愛情という人質のもとに、ただの労働力として消費されていくのが悔しい。

女性だから料理しているのではない。

精神衛生上、料理が手っ取り早いストレス発散法だったことと、外食が多いから体調を整えるためにやっているだけ。

私がパリス・ヒルトンぐらい爆裂なお金持ちだったら、ここまで料理はしない。

長友選手みたいにファットアダプトの専属シェフをつけるし、そもそも無心になる時間が欲しいと思うほどスケジュールを詰めないし、ストレス源は金で解決する!!!

とまくし立て、恐る恐る口を開いた女友達に、

「厳しすぎるよ。あなたにも苦手なものがあるでしょう?パートナーとはお互い補っていかなくちゃ」と諭されます。

そうなんだけど!と言いながら、過去のパートナーにしてもらったことを思い出しました。

洗濯したものをたたむことが苦手なバービーさん、ついには洗濯そのものをやらなくなっていきましたが、その家事をしてくれていたのは、元パートナーでした。

平等!平等!と叫んでいた自分も同じように、異性のことをジャッジし、労働力を搾取していた--。

「家事を強要してこない人」をパートナーの条件に据えていたのも、主導権を取られたくないというエゴだったと気が付きました。

してもらってきたことに目を向けると、視点の置き場所次第で、大きく景色が変わってみえることに気づきました。

そして、お互いのエゴの綱引きを終わらせるには、「せーの」で力を抜くだけで良いのかもしれない、と綴られていきます。

最後に、時が経った今、味噌汁事件のことを冷静に思い出して本音を探ってみると、
「好きな男を抱くためなら、何杯でも味噌汁作ったのに!」
だったそうです。

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こじらせた上にひねくれているこの記事の冒頭にいた頭の良い女の子が、最後は強くてしなやかな女性になっていく、その変遷が見事に描かれていて私の中のバービーさんの印象がかなり変化したエッセイでした。

愛情の搾取という表現が出てきましたが、やりがい搾取、愛情搾取は、

・苦労しなければ成果を受け取ってはいけない
・努力して得たものの方が価値は高い
・辛い思いをしなければ幸せになれない

と、「犠牲になることが幸せの第一条件」という思い込みが原因のひとつです。

先日発表されたワシントン大学の新しい研究によると、1歳半までの赤ちゃんの58%が食べ物を他者と分け合うという利他の行動を取ることがわかりました。

もちろんこれは、赤ちゃんが誰に教えてもらったわけではなく、自然に取った行動になります。

つまり人間は本来、自分が持っているものを与えること、分け合うことは本能に近い部分で行える自然なことなのですが、これを「犠牲」「搾取」と捉えてしまう場合がある、ということなのかもしれません。

与えることと犠牲になることの線引きは、自分の本音と異なることをしているかどうか、だと思います。

本音は嫌だと思っているのに、好かれるためにやることは犠牲になりますし、本音はやりたいと思っているのに、舐められないためにやらないことは後悔に繋がることになります。

自分が誰かに与えることができるというのは、とても幸せで、嬉しいことです。

世の中がどう思おうと、世間でどう言われていようと、自分の本音が嫌だと言っていない限り、与えられる才能は、どんどん与えていけば、逆に受け取れるものも多くなると思うのです。

一般的にはこうだから、と決めつけてしまって、例えば「男性は料理上手な女性が好きなはず」と思い込んでコミュニケーションをしてしまうのは、相手そのものではなく、世の中の常識の方を見てしまっているということにもなりますね。


胃袋を掴ませないでと願うこじらせてしまった女の子が、好きな男を抱くためなら何杯でも味噌汁くらい作る!と心を開いた瞬間に、自分の本音と、相手そのものが見えてきて、一瞬で世界がまったく逆に見えてくる、そんな経験ができるのだと思います。

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