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アニメデジタル化黎明期のアニメ仕事 1996-3/3 フルCGエンドロール編


『新世紀エヴァンゲリオン劇場版Air/まごころを、君に』3/3

祝『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』終劇の大団円

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TITLE Jobs1996. 【新世紀エヴァンゲリオン劇場版Air/まごころを、君に】
•超大量同時キャラクター(ただしこちらは文字)長尺のエンドロール。

Mission-03 怒涛のトルネード、文字の奔流、ただしゆっくりと美しく、輝けエンドロール?
    「しかし…長い…長すぎる。」

映画の本編が終わり、エンディングのキャスト、スタッフの名前を掲示するものをエンドロールという。

ハリウッドのVFX映画のゲンナリするそれに比べれば可愛いものだが、それでも劇場用アニメともなれば相当数の役職、名前が列挙されて流される。
関わったスタッフにとっては大事な証(あかし)だ。クレジット•タイトルともいう。

攻殻機動隊の時のタイトル作業はオープニングのみで、しかもクレジット部分だけであった。

今でこそ珍しくもないが、当時としてもフィルムで仕上げるフルCG長尺エンドロールはそれほどなかった。

え?今はフィルムその物が絶滅危惧種だって?
そんなことはない。磁気テープメディアなんかより修復要素大でよっぽど長期保存できる。面倒見は必要だが。ハリウッドの最新動向を参照にされたし。

 スタッフロールに載せる役職/スタッフ名532行!総尺約4分46秒!
間違えの許されない名前の組み込みチェック、納品スケージュールを含めて、1人や2人で終わるものでもない。
 そこで新進気鋭のsoftoimageチームにこのミッシヨンが委ねられることになった。

 まず、先方からいただく職種、名前のデータ。誤字フォント違いの間違いをなくすため先方が作ったイラストレーターのデータをそのまま使う手順とする。

 だが、当時テレビサイズはNTSC720x480,に対し劇場版はがサイズがでかい
それが約7000フレーム!
ノーカット1ロールで4分半以上!撮影は始めたら止めることが出来ない!
当時としてもとにかく長い。

 スタッフ8人で手分けしてそれぞれの担当分を制作し始めた。
想定された通り、いろいろ問題発生。

 勝手にパスいじるな!、XXXさわるなー!等々怒号が飛び交う(わけではない)単一カットの分業に何が必要か、貴重で崇高な前例となった。

 彼、彼女らはその代償を自らの睡眠時間と引き換えにすることとなる。
そして出来上がったカットを当時の新装備ディスクレコーダーアベカスに投入する。

 短尺ならフリップするソフトもあったが、長尺ではそうもいかず、それまでは、動画チェックする際D1-VTR等のビデオデッキにコマドリして確認するしかなかったがそこそこ時間がかかる。アベカスなら転送時間で画像が収録できる。
MP4やProres等々はまだ先の話である。

そして字体(FONT)が違わないか、もらった紙焼きの名前と差異はないか何重、複数人で確認する。

「とうちゃん(CGディレクター通称)、尺が合わねえだ。」
ソフトイマージュのCG頭(かしら)、○田さんが報告する。

アベカスに飛んで行って確認すると、確かに徐々に音がずれていく。
フレーム数と音楽の尺は計算通りで問題ない、24フレーム(フィルム)を30フレーム(29.97NTSC)と間違えるようなことはしていない。
指示通り黒みを撮るとそこでずれが生じるらしい。

無理々々現在のアベカスの尺数を音楽のSTART/END尺で割って、再生速度を小数点で変更する。
デジタルプレーヤーならではの力技だ。

頭から音楽に合わせて再生確認!
なんといい感じにぴったりと合う。まさに僥倖!

全体の回転速度を丸ごと調整し、尺に関しては何とか突破できた。
(尺もあり、一枚当たりの素材が複数あるのでディスクを圧迫し、奪い合いがあったのは別の話)


監督チェック前の社内試写。
エンディングの回転速度や画角等の見え方チェック用のテストロール試写。

数カット白いはずのエンディングロールに何故かオレンジの色が付いていた。
当初の予定では白の文字が回転しながら上昇していくというものであったが。

フィルム担当の○田君が報告する。
「すみません、十時爆発の時のフィルター入れたままのテークも入っていました。チェックロールから外しときます。」

そこでフィルム魔王ことオプチカルCGエフェクトチーム頭の目が光る。
「待てぇい。そのままでええ。付けとけ。」とおっしゃる。
前々から何やら考えていたようだが決断したようだ。

「よろしいんですか?」担当くんが問う。
魔王がニヤリとして「ええから。」
(因みに監督も何か考えていたようだとの情報もアリ、シンクロ率濃^^)

「○田、ちょっとこい。」
魔王のご召喚だ。
「なんでげしょ?」
softimageのCG頭(かしら)○田さんがちょこっとやってくる。
「アレな、文字が回転する時、正体した瞬間に一番反射率が高くできるか?」魔王が問うた。
「それぞれの文字列が真正面向く瞬間すか?」
「そうよ、出来るか?」魔王が不敵に笑う。
「その心は?何企んでやんす?」頭が魔王の目を覗き込む。
「仕上げは見てのお楽しみだ。」嬉しそうな魔王。
頭も負けずにニヤリとして「よござんす、承りやしょう。」
まるで悪徳商人とお代官さまのようにニヤつく2人
何やってるんだこいつら。
そしてCGDに秘匿したまま(撮影効果はお任せだから問題ない)企みはすすむ。

そして、監督チェックの試写。
オレンジ味を帯びたエンドロールのテストロールが、魔王の目論見通り
採用される。
監督も動きのテストパターンを見たとき、同じようなことを考えていたようであるが、魔王エフェクトを採用した。

ここで再びデジタルオプチカルエフェクトチームの登場である。
エンドロールは3種類の素材を必要とする。下地の画、マスク、シェーディング素材である。

これにさらに十字爆発の時のようにフィルターでさらにぼかしを乗せる。

約7000フレームを何度も巻き戻し、素材、エフェクトを変えてフィルムに撮影していく。

画像の順番待ち替えなどはないが、怖いのはアナログヒューマンエラーである。担当者の苦労は、計り知れなかった。

その後、ここでは語られないエピソードを越え、本番試写。

見事監督から、OKをいただく!(あの猫の二ヤリを見たとか、見ないとか)

すったもんだもいろいろあったが、無事全カット納品が完了した。

スタッフロールl

 初号後の打ち上の時、GAINAXのスタッフがCGDに「エンドロール文字が輝く瞬間のところが良かったですね」と言われたとき、魔王や頭から何も聞いてないCGDは「偶然じゃないですか?」と答えてしまったという。
その時そばにいた魔王と頭は烈火のごとく睨みつけていたのは言うまでもない。(ごめん m(__)m CGD談)

 その談笑しているCGチームの塊に、○口さんが眉間に皺を寄せ人並みをぬって近づいてくる。
十戒の紅海割れとまでいかないものの、あの巨体が人混みなどいないようにスルスルと近づいてくるように見えた。

「あのエンディングの名前一人修正するのにどのくらいかかりますか?」
恐れていた事態が起こった、原版誤植である。あんなに確認したのに〜^ ^;

その後無事修正納品されたが、それはまた別の物語りである。
エンドロールチームの皆様に祝福あらんことを。

なお、エンドロール担当のsoftimage頭の○田さんは、シン・エヴァンゲリオン劇場版:||にもクレジットされている。お疲れ様でした。


スタッフロール - ニコニコ動画

https://sp.nicovideo.jp/watch/sm30866151



スタッフロール 新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に


PS.毎回スタッフ積んで打ち合わせに三鷹に行くのに、何故かいつもCGディレクターが社車を運転していた気がする。^ ^;何故だ。?

ああ、人生三笠山。
EOL2021.11.24

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