栄養ドリンク、或はチューハイ
酔っぱらいの戯言と思って、
ぜひこの赤白橡色の煉瓦づくりの高架下で聞いてくれ。
人間てのぁ、
そんなもんだ。
私がくそにもならない、
くだらないことをやってる、
そう思うだろう?
違うんだ、それが今や大事なんだ。
好きなことをしっかりやりぬくんだ。
誰が今この時にそんなことをしている?
そんなの阿呆のすることさ。
本当にそう思うかい?
一番知らなければならないのは、
自分が今なにをしたいのか
自分が理解することさ。
自分がしなければならないことじゃぁない。
自分がすべきことでもない。
自分がしたいと思うこと、
そんなこと、思い付かない?
誰だって持ってるけど、
歯止めが、
制御があるだけなんだ。
これをごらん。
これは、
どんな制御も壁もなくしてしまう薬。
実は、もとをたどれば
これはただの砂糖水なんだが、
そういって飲ませるだけで、
これは不思議な薬に変わる。
人間はもろい。
だから制御や壁や防御、
言い訳や理由が必要なのであって。
だから、それなんだ。
信じ混ませる、
頼りにする力、
こいつを使うのさ。
歯止めなんてなくなって、
しっかりやりたいことをやりぬくようになっていく。
傷つく?
そんなこと気にしちゃいない。
前に進むには傷なんて当たり前にできる。
裸足で道を歩けば、
小さな傷なんていくらもできる。
だから、
砂糖水ははじめの一歩には大切だ。
そういって、酔っぱらいはくぴりと最後の“砂糖水”を飲み干して、
赤白橡色の高架下からよろよろと出ていった。
背中には夜の電車から漏れる淡卵色の灯りが照らされていた。
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