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マイクロノベル集/やさしさ? いじわる? 001

001(926)
本が開かない。「好きくないの!」実家に忘れていた、子どもの頃に読んだ一冊がかたくなに開かない。「エーちゃんにしか読ませないの!」私がそのエーちゃんだよ。「嘘つき!」どうしよう。なにが悪かったのかな。ぼろぼろ涙が出てくる。「……少しだけ読む?」


002(935)
おかしいな。異物として排除されちゃう。他のみんなはうまくやって馴染んでいるんだけど。「周りをよく見て。言葉や仕草を真似して。コピーでいいんだよ」それじゃ商品化だよ。量産型だよ。悩んじゃうな。え? 仲間に入れてくれるの?


003(939)
たとえば、たとえばですね? 機嫌が悪い時は、鼻うがいをする女とかどうでしょう。右の鼻の穴から、左の鼻の穴へ。冷たい水を広い鼻腔に通すことで頭を冷やすんです。いえ、フィクションの設定です。なぜあなたは氷水が入ったコップを持つんですか?


004(943)
人間が来たよ。肌を隠してる。長ズボンに長袖だ。寒くなってきたからね。あっ、仲間がさらわれた。おたすけー。おたっしゃでー。「タネがいっぱいついてるよ」ピッピとはがされて、ぼくらは遠い地に根を張る。


005(944)
知らない人が前から近づいてくる。ハアハア息を切らしている。「こんにちは」軽く頭を下げて挨拶する。おかしい。三ヶ月前、この人は私より太っていた。どこでこんなに差がついたんだ。


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