マイクロノベル集 128
911
朝七時を過ぎた頃に、においがあふれ出す。ぼくはこのにおいが大嫌い。顔を伏せて気づかないふりをする。「にゃーん、にゃーん」そんな猫撫で声にひっかかるもんか。元凶に気づいてないの? 君たちの言葉でストレスって言うんだよ。
912
ぬいぐるみがふわふわと浮いて移動していく。時々かたまりになって発言する。「口を慎み給え。君たちはぬいぐるみ王の前にいるのだ」ぬいぐるみ兵たちはビームみたいに大地と衝突、地上を灰に変える。おやすみなさい、人類。
913
ついに反重力を発見したぞ。さっそくメリー・ポピンズをやろう。傘を差して空を飛ぶよ。ありゃ、傘だけ飛んでっちゃった。上へ上へ……どこまで行くかな。月近くのラグランジュポイントまで行けるかな? 残念、フライングヒューマノイドに引っかかっちゃった。
914
えー、ぼくやだよー。働きたくなーい。「正義のロボットなのに情けない! 愛の鞭よ!!」効いたー! 愛の目覚めー!! 「ねえ、あのロボットはどうして急に性能が上がったの?」「考え方を教えたの。怠けること前提で、効率よく働きなさい、って」「言い方」
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あっ、また電池切れだ。ほぼ新品だから気に入ってるけど、すぐ充電しなきゃならない。一日三回は多過ぎだよ。バッテリーがへたってるのかな。夫はニコニコして「なんだか昔のデートみたいだね」だって。久しぶりにラーメンでも食べて充電する?
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