マイクロノベル集/箱 010
076(852)
陸と海、そして空と宇宙。ぼくたちはそれらを切り取って箱にした。箱の中身は時々入れ替わる。手紙。おもちゃ。謎の機械。「ハロー。これは地球を綺麗にする機械だ」スイッチを入れると、機械はただウンウンと唸っている。でも最近くしゃみが出なくなった。
077(893)
キッチンにブラックボックスがあった。昨夜までは白い冷蔵庫だったのだが、今朝起きたら真っ黒になっていたのだ。手で触るのは危険か? 買い置きのジュースでつついたら、スッと吸い込まれて、中から賞味期限がわからない牛乳が出てきた。飲むか?
078(902)
箱の中には妹の部屋。最近ちょっとディスコミュニケーション。ふたには注意書き。「熱力学的に内と外は断絶されています」開けたら焼き肉デート。「効率よく焼けるので」カルチャーショック。
079(916)
よいですか。今から宇宙の真理を伝えます。箱を手に持ち、雑念を捨てて受け取りなさい。「もうちょっと早く喋って下さい」雑念を捨てなさい。「いつまでかかるんですか?」雑念を捨てなさい。「空じゃん」あー。またアップデートを受け取ってもらえなかった。
080(924)
この箱は嫌われている。祖父は見つけ次第、縁側から庭に投げ捨てる。相撲取りなのかもしれない。いまのところ祖父の1勝28敗5引き分けだ。