#006 「不」
便利なものは良い。それはその通り、と思う
とすると、不便なものはよくない、となる。
でも、ふしぎふしぎ。
便利だなと感じる前は、そのことを不便とも思っていなかったのに。
「不」には、なんだか良くないものだと感じさせる魔法でもかかっているのかもしれないな。
仏教の言葉に「不二」というのがある。
対立しているように見える二元的な事柄も、絶対的な立場からみると対立なんてしていないということ。本質は一であるということ。
ふしぎふしぎ。
「二じゃない」という否定の表現なのに、なんだか優しい言葉に聞こえる。
「不」という言葉そのものは、「じゃない」という意味をもつけれど。
それは否定ではないんだな。
だから僕は、「不便」という言葉に、なんだか愛おしさを感じるんだな。
そして、便利も不便も実は対立なんてしていないんだな。
言葉でかたどった感情には輪郭があるけれど
その輪郭の内と外にある感情は、実は対立なんてしていないんだな。
言葉は柵じゃない、言葉は、足跡。
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