#004 見える・見えない
樹は太陽に向かって伸びる
伸びる分だけ、地中に根を張る
本当は、地上に伸びる幹と同じくらい深く潜れればいいのだろうけれど、
地球はそれほど柔らかくない
だから、水平に根を伸ばす
その無数の根で地球を掴む
氷山は海に浮かぶ氷
水面から顔を出しているのはほんのわずか
残りの9割は水面下にある
重力はそれほど優しくない
だから、自分のほとんどを沈める
その浮力で地球の重力から自分を引き剥がす
講演会の資料を作る
この20年間で、手がけた建物もそれなりに増えた
その何倍もの建物のアイデアが、日の目を見ることなく終わった。
見えている部分が
樹のように高く高く伸びようとも
氷山のようにほんの一角であろうとも
たとえ形になっていようとも
見えていない部分が
大地を掴んでいるから
重力に抗っているから
形にならなかったものたちがいるから
見える
「見える」は「見えない」に支えられている
見えないこともまた、愛おしいとおもう
いま・ここ。
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