「車掌ロボット」が自動運転車両に乗る人の不安感を解消。春日井市で実証実験
「次は左折します」「もうすぐ一時停止です」――。
名古屋大学未来社会創造機構は、自動運転中の車両の動きを前もって乗客に伝える「車掌ロボット」を開発し、実証実験を始めました。
自動運転の技術は近年、自動ブレーキや前走車の追従機能、さらには特定の条件下で自動運転が可能な車両が実用化されるなど着実に進化を続けています。一方、その車両に乗る人は「本当に自動で止まるの?」「障害物に気付いてる?」などと、ハラハラ、ドキドキといった不安をぬぐい去れないのも実情です。
こうした課題を解消しようと開発したのが車掌ロボットです。自動運転システムと連動して車両の挙動を乗客に伝える仕組みで、「障害物があるので回避します」「もうすぐ一時停止です」などと音声で伝えます。ディスプレイ表示による伝達ではなく、ロボットが身振りを交えながら伝えることで、より安心感と親近感を持ってもらうのも狙いです。
実証実験を行うのは愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンにある石尾台地区。ここでは地区住民が主体となり2022年10月から、主に高齢住民を病院やスーパーに送迎する有償サービスを運営し、2023年2月から自動運転車両を活用しています。利用客は年間1200人に上り、地域の“足”として定着する中で、アンケート調査により浮かんだのが「自動運転に対する不安感」でした。
車掌ロボットを開発した田中 貴紘 特任教授は「乗客の不安緩和はもとより、何よりも運転手がハラハラ、ドキドキすることの解消につながる」と説明します。
送迎サービスの運転役を担う住民女性の一人は「運転に慣れれば楽でいい。特に車庫入れなどは便利で安心」とお気に入り。「道路脇の雑草に反応して車が止まっちゃった。これから草刈りに行かなきゃ(笑)」と、地区の環境整備にも好循環が生まれています。
同機構は今回の実証実験を通じ、より利用しやすい自動運転車両の開発を進めながら実用化への道筋を探る考えです。実験を統括する金森 亮 特任教授は「高度な技術を過度に追求するのではなく、住民が実際に必要とするサービスを把握し、社会実装につなげていきたい」と抱負を語ります。
※本研究は「知の拠点あいち重点研究プロジェクト」第Ⅳ期の研究成果の一部で、名古屋大学未来社会創造機構、(株)ポットスチル、(株)エクセイドの連携によるものです。