“超移動社会”を目指し、モビリティとまちづくりの可能性を探る——シンポジウム開催
名古屋大学COI-NEXTマイモビリティ共創拠点は11月8日、移動手段の革新による地域づくりを探るシンポジウムを名古屋市の「なごのキャンパス」で開催しました。 “自動運転車いす”の実証実験など、名古屋市の中心部で行われている取り組みなどを報告。住民が快適に暮らせるまちづくりにおける「モビリティ・イノベーション」の姿を、参加者と考えました。
同拠点は、クルマを持たない・運転できない人をはじめとしたすべての人が、最適な移動手段を使って自分の「行きたい」「会いたい」「参加したい」を実現する“超移動社会”を目指し、研究開発に取り組んでいます。
シンポジウムでは、名古屋駅から名古屋城にかけての「エキ・シロ地区」で実施してきた、暮らしやすいまちづくりを目指す取り組みや活動成果を報告。
未来社会創造機構の金森亮特任教授は、円頓寺商店街で実施した「車いす型自動運転パーソナルモビリティ」の実証実験を紹介。「どんなに便利なモビリティでも、実際に乗ってみたいと思ってもらわないといけない。まだまだデザイン面で改善の余地がある」と、今後の課題を挙げました。
会場内では自動運転車いすの体験会を実施。参加者は、障害物に反応して停止する安全機能や乗り心地などを体感し、新たなモビリティの可能性に胸を弾ませました。
パネルディスカッションには、エキ・シロ地区でまちづくりに取り組む関係者らが登壇。モビリティに関する取り組みや課題について意見を共有しました。
名古屋の中心地を流れる堀川を中心に“水辺の魅力”を発信している井村美里さん(水辺とまちの入口ACT株式会社 代表取締役)は、「水上アクティビティの“SUP(サップ)”でゆっくり堀川を下ることで、川沿いのまちの魅力を再発見する活動」を報告。
同拠点のプロジェクトリーダーを務める森川高行特任教授は「SUP自体が観光資源でもあり、移動手段にもなっている。まちづくりとモビリティが上手くかみ合う好例」とコメントしました。
円頓寺商店街周辺でまちづくりを進める団体「那古野下町衆」の藤澤徹さんは、商店街や町並み保存地区に指定されている四間道(しけみち)エリアでの取り組みを報告。空き店舗の再活用などで地区自体の魅力は向上している一方、アクセスのしにくさが課題となっている現状を説明し、「レンタル自転車の設置が切望されているが、景観を損ねるとの声もある。住民の理解を得られるような設置方法を探っていく必要がある」と話しました。
シンポジウムを振り返り、森川高行特任教授は「新たなものを導入するには人に受け入れられないといけない。今後は地域の方たちとさらにコミュニケーションをとり、モビリティの研究開発と豊かなまちづくりを同時に進めたい」と、抱負を語りました。