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若者ファッションの聖地、SHIBUYA109の社長は名大経済卒。石川あゆみ社長に突撃インタビュー

東京・渋谷のど真ん中で若者のトレンド発信拠点として存在感を放つファッションビル「SHIBUYA109(通称:マルキュー)」。このビルを運営する東急グループの子会社、(株)SHIBUYA109エンタテイメントの代表取締役社長を務めるのが、名古屋大学を2000年に卒業した石川あゆみさんです。名大広報の立場から言うのも何ですが、“真面目&地味の代名詞”との印象が強い本学の卒業生が“ギャルの聖地”とも呼ばれるSHIBUYA109の代表を務めているって、どういうこと?? そんなギャップに驚かされたのを機に、石川さんにお会いしてきました。

まさに渋谷の“ど真ん中”。テレビでよく見かけるスクランブル交差点の正面にあるSHIBUYA109

名大を卒業されてから、どのような経緯でSHIBUYA109エンタテイメントの社長に就任されたのですか?

やっぱり誰もが、意外な印象を持ちますよね(笑)
実は、SHIBUYA109には新卒で入社したわけではなく、転職と異動の中で現職に着任した、という経緯があります。

私は2000年に名大を卒業して通信キャリアの会社に入り、そこで法人営業や、当時は先駆けだったモバイルインターネット通信を活用したコンテンツビジネスの仕事に関わりました。7年ほど勤めていましたが、出版社に転職して書籍の電子化に携わった後、社風が自分に合っていると感じた東急株式会社に転職しました。

それまでの経験とスキルを生かしてDX(デジタルトランスフォーメーション)やマーケティングなどに従事していたのですが、課長職をやっていた2021年4月、子会社であるSHIBUYA109エンタテイメントの社長として出向辞令を受けました。

SHIBUYA109エンタテイメントの社長を務める石川あゆみさん(経済学部2000年卒業)

課長から子会社の社長への抜擢人事は、社内が相当ざわついたと想像します(笑)

私も驚きました(笑) 
SHIBUYA109エンタテイメントに来る前までは、東急株式会社でスーパー・百貨店といった東急グループのリテール事業の中長期的な戦略づくりやポイント制度の設計、店舗の無人化など、主にITを活用したマーケティングや顧客プラットフォームの構築などに携わってきました。

東急グループは渋谷を中心にさまざまな開発を進めている企業なので、「若者の街である渋谷での商業施設運営にはやっぱりマーケティングとDXが必要」ということで、これまでのキャリアを生かすことを期待されたものと認識しています。

SHIBUYA109の会議室の壁には、訪れた人たちのサインやコメントがずらり

インターネット通販全盛の時代、店舗での商品販売は簡単ではなさそうですね。

そうですね。“どう共感してもらえるか”がとても大事だと考えています。たとえば商品販売で「これが売れている」というのは単に事象であって、どうして売れているのか販売データだけでは分かりません。そのブランドが好きなのか、デザインなど商材が好きなのか、売れているアイテムだけ見ても分からないんです。

最近“共感消費”とか“応援商品”という言葉を聞かれることがあると思いますが、現代の若者の熱量や情熱はこうした部分にすごく傾いています。物自体の価値よりも、体験だったり応援だったり、共感できるものにお金を使っていく傾向がとても強いです。これは学校選びとか企業選びとかも同様で、本当に共感できる会社、学校に入りたいという人がすごく多いと感じています。

そんな世情を踏まえて、SHIBUYA109は単なる若者向け商業施設ではなく、若者の今を同じ目線で理解し、彼らと共に創り上げていく“若者文化の共創拠点”を目指しています。また、会社としては、若者のニーズを掘り起こす「若者ソリューションカンパニー」への転換を進めているところです。

運営する事業で蓄積したノウハウを活用する他、15~24歳の若者、“around20”に特化したマーケティング機関「SHIBUYA109 lab.」で、毎月200人ぐらいの若者から話を聞いてトレンドを把握するといった定量調査を通じて、自社の商業施設運営だけではなく、外部の企業の皆さんへ若者向けのマーケティングやプロモーションを支援する事業などを展開しています。

スタッフとの打ち合わせはいつも和気あいあい。次から次へとアイデアが飛び出す

「界隈」という言葉がSNSで飛び交い、若者のトレンドとして話題となりました。

以前はSNSで不特定多数の相手に向けて発信する若者が多かったのですが、最近は、自分の仲の良い友達とか同じ趣味を持った人とか、同じ「好き」や興味関心をもつ人々がSNS上を中心に“界隈”と呼ばれるゆるやかな集団を形成するようになり、こうした個々の情報伝達からトレンドが生まれています。

たとえば2024年ですと山や川、植物園など、自然の多い場所で写真を撮って、 #自然界隈 とハッシュタグをつけてSNSで投稿する動きが見られました。SHIBUYA109 lab.で調査したところ、コロナ禍が明けてみんなで集まって遊ぶ機会が増えて盛り上がっていたけれど、それに疲れてちょっと落ち着きたいという人がいて、デトックスや自然、癒しに関心を向けていることが浮かび上がりました。

当社は、若者の間で今何が流行していて、何に熱量が高まっているかを常にとらえ、SHIBUYA109の中で体現していくことが大きなミッションであり役割だと考えています。若者の今に寄り添い、若者の夢や願いを叶える場所を、若者とともに作っていきたいですね。

2025年度はコレが若者に流行する!(SHIBUYA109 lab.ホームページより転載)
https://www.shibuya109lab.jp/article/241205.html

若者と共に文化を創る仕事、素敵ですね。そんな石川さんはどんな若者だったんですか?

このような仕事をしていると、ちゃんと毎日学校に行って、キラキラとしたキャンパスライフを送ってきたと思われることも多いですが、サークル活動をしたりアルバイトしたりと、いたって普通の学生でした。

地元は愛知県豊田市で、高校生の頃から夢や学びたいことが特にあったわけでなく、大学進学も「東京は怖いな」といった感じで、地元から通える名大を選びました。経済学部を選んだのも、「社会に出て役立ちそうかな」といった程度の考えで…、すみません(笑)

お世話になった先生方には、学びに積極的ではなく大変申し訳ない学生でしたが、そんな中でも思い出深い授業は、第2外国語として選択したドイツ語です。現在は退官されている小坂光一先生(名大名誉教授)の授業で、2年生のときに1カ月間、希望者はドイツとヨーロッパへ行くというカリキュラムがありました。

最初の2週間はドイツで語学研修があったのですが、後半は個別行動となり各々がヨーロッパを自由に旅して、2週間後の決められた日に、スイスのこの場所で集合しましょう、という行程でした。

当時は携帯電話のない時代で、友達と行きたい国を何となく決めて旅行ガイドブック『地球の歩き方』と時刻表の本だけを持ってフランスとイタリアを巡りました。「シャンゼリゼ通りの脇の三ツ星ホテルでも当日交渉すれば3000円で泊まれる」という感じで先生に教えてもらい、そのとおり実行するという、今ではなかなか考えられないような旅でした。初めての海外でしたが、「それが当たり前」みたいに先生は言うので、いきなりのバックパッカー生活でもあまり怖いと思わず行っちゃったわけです(笑)

海外でのそんな体験もあり、帰国後もたびたびバックパッカーとして世界を旅していました。この経験を経て、

何とかなる、知らないことでも怖くないという感覚を持てるようになり、自分の中で大きく選択肢が広がりました。そういった意味では小坂先生の研修旅行は学生時代で一番思い出深い出来事かもしれません。

学生たちにメッセージをお願いします!

今しかできないことにどんどんチャレンジしてほしい、という一言に尽きますね。

私の学生時代と今では情勢が大きく違いますが、自分がこれまでやったことのないことや超えられるのが難しそうな壁はどんなときにもあります。社会に出てからは特に多いように思います。その時に自分の中の常識や限界を突破する力はとても大切です。だからこそ、学生時代は、様々なチャレンジを通じて成功体験を積み重ねて、どんなことでもやってみたらできる!という自信をもってほしいなと思っています。

具体的には、インターンシップはとてもおすすめです。SHIBUYA109 lab.でインターンシップの学生さんと一緒にマーケティング調査をしたり、SNSでの発信をしてもらったりして、学生ならではの目線は企業にとってもプラスになっています。雇う側も雇われる側も相性がありますが、「こんな社風でこんな事業だったら共感できるな」といった、会社説明会だけでは分からない会社のカラーがよく分かると思うので、ぜひ活用してみてください。

学生時代はとっても時間があるので、なんとなく過ごしてしまいがちですが、社会に出ると仕事や家庭など自分ではコントロールできないことで自分の時間を捻出することが少し難しくなります。学生のうちはまだ会社や仕事にしばられずいろいろな経験をセレクトできるので、勉強でなくてもいいのでとりあえずチャレンジをしてみてください。皆さんの可能性や選択肢が大きく広がるのではないでしょうか。

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