40Hzって何かある!?触覚刺激の効果とは?
コレ、何だと思いますか??
お面?一瞬、〇〇レンジャーかと思いました…🙄そう、顔に被るモノです。
これは実は、「ポータブル型顔型振動呈示装置」です😮。
顔に振動?一体何に使う機械なのでしょうか…??
「自然や音楽に含まれる低周波音をこの装置から流すことで装置自体を振動させます。そして、その振動を顔全体で受けることで、精神的症状を緩和させることを目的としているんです。」
そうお話されるのは、名古屋大学の鈴木 泰博さん(情報学研究科 准教授)です。低周波音の振動を顔で受ける、その詳細についてお話を聞きました。
──まず、付けてみてもよいですか?
もちろんです。装置の目と口のあたりの2か所にスピーカーが付いていて、そこから音が出ています。カバーをかぶせて顔に密着させてみてください。
──お~😮。振動していることが顔全体で感じられるほどに振動するのですね。優しく顔全体がマッサージされているような心地よさを感じます。
今流しているのが、自然から拾ってきた低周波音から作った音の振動になりますね。
──低周波の音は色々な種類があるのですか?
はい、あります。自然界に色々な低周波の音があって、実はあちこちでコレクターのように収集しています🤭。パワースポットとか。使用する人の好みで好きな音を選んで使えるようにしています。
──低周波と言っても幅広い波長があると思いますが?
最も心地よく感じる周波数はいくつだろう?と私の尊敬するエステティシャンの妻に体感してもらったところ、40Hz、だったのです。絶対40Hzが一番心地よい、と。この40Hzの音ってどんな音かと言うと、エアコンの室外機や扇風機のファンの音です。でもこの音だけを受け続けると気持ち悪くなったりするのですが、それ以外の周波数の音が混じることで心地よく感じます。
──40Hzの音ってすごいのですね。
2022年に私達が行った研究で、軽度認知症の患者さんらにこの40Hz音を1カ月受けて貰ったところ、記憶力や注意力の大幅な改善がみられました。そして、2024年の研究では、代謝やフレイルにも改善する可能性が示されました。なので、40Hzの音の触覚刺激は、色々な場面で効果があるかもしれない、と思ったのです。
──なるほど…なんだかものすごく幅広いお話なのですが、そもそも先生のご専門は何になるのですか🙄?
確かに(笑)。私は美容とは全く関係のないハードサイエンス(自然科学の中でも 物理学や数学・計算機科学など)をずっとやってきました。そして、そのうちに触覚が自然界を通じていろいろな現象に繋がることが分かり、今は触覚を情報化する研究をしています。触覚計算系と言うのかな。
──ハードサイエンスの進化系ですね!今回はこの機器を用いてメンタルヘルスケアへの効果を検証されるのですね。
当初は美容機器として開発したのですが、その他の疾患にも効くのでは?と考えまして。元々は、薬じゃない何か他の方法で人々を健康にできないかな?と思ったのがキッカケです。この低周波音による効果って、科学的にはまだ分からないことばかりだけど、改善する可能性が見えてきた。だったら頑張ろう、という気持ちで今回の大規模研究に臨んでいます。
──40Hzの音を受けて「揺れる」ことがよい、のでしょうか?
そうですね。細胞って機械的な刺激を受けるとそれに応じて様々な生理的反応を起こします。これを「メカノストレス応答」というのですが、実はこのメカノストレス応答が認知症に関係があるのではないか?という話も近年あったりしていますが、なぜ効くのかについては今後の研究で明らかにしていきたいと思っています。
・・・ちなみに、余談ですが、この音の違いって分かりますか?どちらかは1953年に録音された音楽のそのもの、もう一つは録音された音楽に40Hzの音を重ねたものです。
©Romeo e Giulietta: I. Romeo e Giulietta NBC Symphony Orchestra, Arturo Toscanini
──わ!全然違う!!
でしょ。有名なオーケストラの皆様に聞いていただいてもザワついたんですよ(笑)。実は、オーケストラの生音に40Hz音を重ねたこともあるのですが、演奏後にその音の素晴らしさに演奏者たちが涙を流しちゃって。すごかったんです。なので、40Hzって何かあるんですよ。実は40Hzの音を重ねることで音が変化しているのか調べるハードサイエンスの研究もしています。
── 皆様、音の違い分かりましたか😊?2が40Hz音を重ねている音源になります。ハードサイエンスからエステ、そしてオーケストラとのコラボと、ものすごく幅広い研究をされている鈴木さん。40Hzって何かある、そのナゾが分かる日が来るのが楽しみです☺️。
インタビュー・文:坪井知恵(名古屋大学URA)
◯関連リンク
名古屋大学 研究成果発信サイト(2024/10/17 ) 自然音や音楽の"振動触覚"でメンタルヘルスケア 低周波刺激による症状緩和の検証へ臨床研究を開始 - 名古屋大学研究成果情報
本臨床研究の論文情報1(国際学術誌「Biomolecules」誌に掲載。論文タイトル:Unmodulated 40 Hz Stimulation as a Therapeutic Strategy for Aging: Improvements in Metabolism, Frailty, and Cognitive Function in Senescence-Accelerated Prone 10 Mice
本臨床研究の論文情報2(国際学術誌「International Journal of Environmental Research and Public Health」誌に掲載。論文タイトル:The Effect of Deep Micro Vibrotactile Stimulation on Cognitive Function of Mild Cognitive Impairment and Mild Dementia
鈴木 泰博さん(名古屋大学大学院 情報学研究科)