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素粒子宇宙円卓会議#6 |スパコンで創る量子色力学ワールド

KMI素粒子宇宙起源研究所の研究者と、KMIサイエンスコミュニケーションチームと名大研究フロントラインメンバーが台本なしに交流し、どのような相互作用が生まれるのか」という切り口で、KMI研究者をゲストに迎え、素粒子宇宙対話をポッドキャスト配信する本企画。

6回目となった今回は、金児 隆志かねこ たかしさん(KMI 特任講師/高エネルギー加速器研究機構(KEK) 研究機関講師/総合研究大学院大学 研究機関講師)をお招きし、お話を伺いました。

収録はES総合館の7階で行っています

金児さんは、格子QCD(Quantum Chromodynamics/量子色力学りょうしいろりきがく)を数値シミュレーションの手法を使って研究しています。今、名大ではこの分野の研究者や学生がやや少なめということで、ご研究の魅力を語っていただきました。格子QCDなど、専門的な用語をページ下部のコラムで解説しています。ご一緒にお楽しみください。

0:00 オープニング
1:45 QCDについて
8:40 実験との比較
20:00 なぜ格子QCD?
23:40 スパコンを使った研究
27:50 今後の格子QCD分野の方向性
34:25 よくある1日
39:10 オフの1日
40:15 研究での楽しいとき苦しいとき
42:15 研究者になった経緯
45:15 大学院に進む人に向けてのメッセージ
46:25 クロージング

~ コラム ~
○パートン
物質を作っている原子は原子核と電子に分けられ、原子核は陽子と中性子でできています。その陽子や中性子に含まれているものをパートンと呼びます。陽子や中性子のパートンには物質を構成する粒子であるクォークとしてアップクォークやダウンクォークがあり、物質の間で受け渡ししているゲージ粒子としてグルーオンがあります。各クォークは反粒子と呼ばれるペアを必ずもっています。パートンとしてクォークを複数持っているものをハドロンと呼びます。ハドロンのうち、クォークを2つ持つものをメソン、クォークを3つ持つものをバリオンと呼びます。(パイオンやB メソンはハドロンの一つで、パイオンはアップクォークと反ダウンクォークをパートンに、B メソンは反ボトムクォークを一つパートンに持っています。パイオンは比較的軽く、B メソンは比較的重い粒子となっています。)

図1. パートンのイメージ図

○強い力と量子色力学(QCD)
素粒子物理学では二つの粒子の間で力が働いていることをゲージ粒子と呼ばれる粒子の受け渡しをしていることとして考えます。ハドロンを構成するクォークの間に働く力のことを"強い力"と言います。強い力ではクォークの間でグルーオンを受け渡ししていると考えます。この”強い”という言葉は、正の電荷と負の電荷の間に働く電磁気力よりも強いという意味で使われています。この強い力はクォークが三つで安定になっていることから、2008 年にノーベル賞を受賞した南部陽一郎博士らによって、光の三原色に例えられました。このように強い力について考える理論のことを量子色力学(Quantum Chromodynamics(QCD))と呼びます。クォーク一つが三原色のうちの一つの色を持っていると考えて、全体で白色になるときに安定になるとして考えています。また、反クォークは元の色の補色の色を持つと考えています。

図2. 格子空間のイメージ図:丸の部分は交差点で、この交差点の部分にクォークが存在して、交差点を繋 ぐ線の部分にグルーオンが存在します。

○格子QCD(ラティスQCD)
QCD の世界をコンピュータで再現しようとしても、時間と空間、すなわち時空を途切れなく連続的に続くものとして考えてしまうと、コンピュータの限りあるメモリでは計算することができません。そこで、時空を図のように丸の部分とその丸を繋ぐ線のようなものが格子状に規則正しく並ぶものであると考えました。これを格子空間と呼びます。格子空間では、丸や線は一つや一本で時空の点を表します。この丸の部分にはクォークが存在して、それを結ぶ線の部分にはグルーオンが存在していると考えます。この格子空間を用いて、例えば加速器実験で生成されるハドロンの反応をクォークやグルーオンまで考えて調べたりしている分野が格子QCD と呼ばれる分野です。格子QCD は強い力を基本原理(QCD)から調べることができる強力な手法とし
て現在注目されています。

監修: 金児隆/執筆: 田嶋大雅(KMISCT)

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◯関連リンク
KMI Science Communication Team(KMISCT)
高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 理論センター
KMISCT twitter

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