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無限の可能性!蛍光入りの構造色

構造性発色(構造色)って、知っていますか🧐?
構造色とは、色素や顔料を用いずに、光の反射によって見える色のことです。身近な例でいうと「シャボン玉」でしょうか。この仕組みを自身の体に持つ様々な生物たちがいます。コガネムシ🪲やカワセミ🕊️のキレイな羽の色などが構造色です。この構造色の材料を作り出す研究者が名古屋大学の竹岡 敬和たけおか ゆきかずさん(工学研究科 准教授)です。

「今回、構造色に更に新しい発見がありました。」

との一報をいただきました。竹岡さんとこの研究を進めてる、何 佳磊ひ じゃれいさん(工学研究科 博士後期課程学生/現在:上海交通大学医学院虹橋国際医学研究院 助手研究員)にお話を聞きました。

構造色ってナニ??という方、竹岡さんと何さんの前回の成果をご覧ください。👇👇👇👇👇


写真左上:竹岡 敬和たけおか ゆきかずさん(工学研究科 准教授)
写真左下:何 佳磊ひ じゃれいさん(工学研究科 博士後期課程学生/現在:上海交通大学医学院虹橋国際医学研究院 助手研究員)
写真右下:名大研究フロントライン執筆者 丸山 恵まるやま めぐみさん(学術研究・産学官連携推進本部URA)
写真右上:本記事執筆者 坪井 知恵つぼい ともえ(学術研究・産学官連携推進本部URA)

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──今回の成果は2023年の成果の続編、ということなのでしょうか?

(竹岡さん)そうですね。前回の話は、構造色を生み出す棒状の分子(コレステリック液晶粒子)からなる微細構造に右向き左向きがあり、それに伴って見える色が変わる、ということでした。今回新たに分かったことは、①コレステリック構造のねじれはあるところまで行くと反転することが分かったこと、②元々ある構造色に蛍光色素を組み込んだ粒子を開発できたことです。つまり、普通の太陽光の元では構造色が見えて、紫外線(UV)を当てると蛍光色素が光って見えます。

コレステリック液晶粒子にねじりを生み出す分子(キラルドーパント)(x軸が濃度)を添加し、円偏光発光(CPL)(y軸右)と回転方向glumじーらむ(y軸左)を示した結果です。青色の部分(LCPL)は左向き、緑色の部分(RCPL)は右向きの回転を示すそうです。添加するキラルドーパントの量が増えると徐々に左回転が増え、ピークに達した後は徐々に減少し、最後には右回転に回転方向を示すようになるんだとか。こんなにも大きくglumじーらむ値が変動する分子はあまりないんですよ、と竹岡さんが教えてくれました。(画像は何さんより提供)

──コレステリック構造のねじれが反転する、これは予想通りだったのですか?

無秩序にあるコレステリック液晶粒子にキラルドーパントが入ると、らせん状構造を取るそうです(図真ん中)。そこに更にキラルドーパントを入れると各層がへねじれた構造を形成し、構造色の色相も変化するそうです。なんだか生きているような動きですね🧐。(画像は何さんより提供)

(何さん)I didn't expect this at all…🙄My co-researcher said, "Wow, so amazing!!". Furthermore, it is extremely unusual for the glim value to change so dramatically.
(竹岡さん)誰も予想してませんでしたね。共同研究の先生も、これは大きな変化が出ていますね、と驚いていました。glumじーらむの変化って今まで見たものの20倍は高い数値だと思います。

──右向きと左向き、変わると色相の変化ってどうなるのですか?

(竹岡さん)例えば、コガネムシからは実はらせん状の光が出ていて、普通に目で見るとよくある緑色に見えている(下写真左)のが、右向きの変更フィルターを上に置くとその緑色が見えなくなっちゃいます(下写真右)。

コガネムシを普通に見ると緑色(写真左)に見えますが、右向きの偏光フィルターを介してみるとなんと茶色(写真右)に見えます。(画像は何さんより提供)

──なんと…こんなに見え方が変わるのですね。

(竹岡さん)それに対して今回は、更にコレステリック液晶粒子に蛍光色素を入れることによって、構造色だけでなく蛍光色も偏光をもたせて作ることができた、ということになります。

ばらばらになっているコレステリック液晶粒子にキラルドーパントを入れ、更にそこに蛍光色素(右図内青色)を入れるとらせん構造の中で色素が重合し、偏光性を示す蛍光にも光る粒子ができるそうです。(画像は何さんより提供)

──それが2つ目の発見ですね。

(何さん)はい。紫外線を当てると青色に光ります。
(竹岡さん)一方で、紫外線を当てずに可視光で見ると、構造色が見えてて青から赤まで色を変えられるのですよ。

今回開発した蛍光色素入りのコレステリック液晶粒子を使用した時の見え方を教えて貰いました。
左(N):自然光の下、中(L):左周りの円偏光の下、右(UV):紫外線の下
それぞれ見え方が異なります😮自然光の下だと何も見えないのに…(画像は何さんより提供)

──構造色×蛍光というとても広い範囲の色彩の素材を開発されたと思いますが、具体的にはどのような応用を考えていますか?

(竹岡さん)実はプレスリリースして、すぐに何君に他の大学の先生から問合せがありました。この粒子をすぐに送って、ディスカッションしていました。その先生はセキュリティのことやっている先生でしたよね?
(何さん)はい😊。セキュリティ以外の使用は…Each of the microparticles we have created has different technical properties, and we hope to use these properties to create optical devices that can be used for micrometer-sized biological detection.
(竹岡さん)何君は、今回はいくつかの工学的な物性の違いがある微粒子なので、それを用いて生体内の例えば何かタンパク質とか?を検知するようなセンサーでもいいのかな、そんなオプティカルデバイスを作りたい、と言っています。

──今後はそのデバイス作りの方に、この研究は進んでいくのでしょうか?

(竹岡さん)もうすでに今いる所属のところで、進めているのかな?多分。
(何さん)はい!既に進めています。

──さすが!ところで、竹岡さんと何さんはどうやって知り合ったのですか?

(何さん)Oh, Takeoka sensei is a very famous researcher in the field of structural coloration. When I was a master's student, I read his papers many times. So I emailed him saying that I wanted to study under him in the doctoral course, and he immediately replied "YES!!".
(竹岡さん)何君も出身の研究室で構造色の研究をしていたのですが、マスターコースで既に論文を書いていたのです。彼は中国のCSCという国費留学生に応募して見事受かってきてくれたんですよ。とても優秀な方です。

──とっても素敵な関係性ですね!

(竹岡さん)しかも、実は2023年の研究も今回の研究も、実は何君が研究テーマもすべて自分で立案し、自分で進めていった内容になります。論文のファーストオーサーであるだけでなく、実はコレスポンディングオーサー(責任著者)も何君にしてあります。本来はすべて彼の成果なのですよ。
(何さん)いえ、竹岡先生のご指導のおかげです。You always supported my research. He supported me in many ways, including research funding and space, which allowed me to focus on my research and I believe led to good research.

左:何さん 右:竹岡さん
何さんの学位を取った時のお二人の写真をいただきました😊とっても素敵なお写真です。

── 教え子である何さんを一人の研究者として敬う姿勢の竹岡さんと、恩師に感謝の気持ちを伝えたい何さん。こんな素敵な関係性に出会えたことに感謝したいです😊。名古屋大学にこんな素敵なお二人がいたなんて。仕事をする場所は離れていますが、きっとお二人の関係性はもっと強くなっていくんだなぁと思いました。何さんの今後を応援しています!

インタビュー・文:坪井知恵


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