子どものADHD、夜ふかしによる過剰診断には注意 【44】
今回は、子どものADHDと睡眠についての研究をご紹介します。
経済学部4年の越川光がお届けします。
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実は私自身、夜中に寝付けなくて、朝起きるのが辛くなることが多々あり、睡眠に関心があってこのテーマを取り上げたいと思いました!
今回のメイントピックADHDは、注意欠如多動症ともいい、不注意や多動性、衝動性が特徴です。発症率は、大人が2.5%に対し、子どもは5%で2倍です。ADHDと診断される人の20〜50%が睡眠習慣に問題があるといわれていますが、症状の強さと睡眠習慣・体質との関連はわかっていません。
また、睡眠習慣によって、眠くて不注意になったり衝動的になったりすることで症状を過剰に評価してしまい、ADHDを正しく診断できない可能性も指摘されてきました。
そこで、名古屋大学と浜松医科大学の共同研究グループは、遺伝的にADHDを発症しやすいかどうかに着目し、睡眠習慣とADHDで見られる多動衝動性と不注意症状の関連を調べました。
8〜9歳の子ども約800人を対象にADHDの発症に関連する遺伝子解析と睡眠習慣との関連調査を行った結果、夜眠る時刻が遅い子の方が、多動衝動性と不注意症状が強いことがわかりました。この結果はうなづけるのではないでしょうか。
ただ、この傾向は、遺伝的にADHDを発症しにくいグループの方が強く現れたのです。これはどのように解釈できるでしょうか? 研究グループが指摘したのは、実際はADHDではない子が、眠る時刻が極端に遅いことでADHDと診断されるなど、過剰診断が起こっている可能性です。
研究を行った髙橋長秀准教授からコメントをいただきました。
実際にADHDのお子さんは寝つきが悪いことも多いのですが、今回の研究はADHDの診断を行う時には、睡眠習慣を注意深く評価することの重要性を改めて示唆していると思います。
現在のガイドラインでも、睡眠障害はADHDの鑑別診断として挙げられていますが、診断フローチャートに睡眠の評価が組み込まれるとよいのではと考えています。
今回は、ADHD診断と睡眠評価の大切さについて、お話しさせていただきました。ADHD診断において睡眠が大切な要素なので、今回の研究が進み、広く周知されることで過剰診断が減って欲しいなと思っています。
詳しくは、2021年1月6日発表のプレスリリースもご覧ください。
(文:越川光、丸山恵)
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