見出し画像

筋肉の三次元培養に見惚れました~工学技術を用いた食品成分の機能評価~

この小さいモノ、なんだと思いますか??

透明で柔らかいプニプニしている、シリコーンの一種の素材でできている
コレはマイクロデバイスと呼ぶのだそうです。これをどのように使うのか🧐

こんな風にプレートに埋めて使うのです。
で、結局、なんなのか??🧐🧐🧐

「このマイクロデバイスを用いて、三次元培養の筋組織が作れます。」

そう穏やかにお話くださったのは、名古屋大学の清水 一憲しみず かずのりさん(工学研究科 准教授)です。清水さんのご専門は生物工学。より生体に近づけていけるようなデバイスの開発をされています。そして、清水さんの作るこのデバイスを用いた三次元培養の筋組織に見惚れたのが、永井 研迅ながい あきとしさん(工学研究科 博士後期課程学生/サントリーウエルネス株式会社研究員)です。今回は筋持久力アップを目指す新しい発見があったとのこと、早速お話を聞いてきました。

インタビューのダイジェストをポッドキャストでお届けしています! 
番組登録をよろしくお願い致します😊👇👇👇👇👇

(写真左)清水 一憲しみず かずのりさん(工学研究科 准教授)
(写真右)永井 研迅ながい あきとしさん(工学研究科 博士後期課程学生/サントリーウエルネス株式会社 研究員)

──今回の成果は三次元培養をしたヒトの筋組織を用いて行われたのですね。

(清水さん)そうですね、今回は第二弾だよね。
(永井さん)そうなりますね。第一弾もこの三次元培養をした筋組織を用いて、サルコペニア予防に寄与する成分の評価をしました。

(永井さん)食品中の機能性成分はアミノ酸、脂肪酸、ポリフェノールなどがあるのですが、これらの効果を正しく評価することって、実は難しいのです。ヒトへの応用を考えると、ヒトの状態に近い評価系を用いて効果を検証することがとても重要です。

──なるほど。 今回は”ケルセチン”を用いた新しい発見だったようですが、ケルセチンってどのような食品成分なのですか?

(永井さん)ケルセチンは、私たちが普段食べている玉ねぎやブロッコリーなどの野菜や果物にも含まれているポリフェノールの一種です。脂肪減少や血管機能や最近では脳の機能にも効果がある可能性が謳われています。

── ケルセチンって色々な効果があるのですね😊。筋肉に対して効果がある、と今まで報告はなかったのですか?

(永井さん)ケルセチンが筋肉の減少を抑えたり、筋肉の質を変えたり、筋肉の柔軟性を変えるという報告があり、ケルセチンは筋肉にも有用な効果があることが知られています。ただ、ヒトの筋細胞でケルセチンの筋肉の持久力に対する有効性を調べた研究は今までなかったのです。

──筋肉の持久力って言うと、走って測定する、イメージがあります。ヒトの細胞で筋肉の持久力や筋肉の収縮力って評価できるのですか?

(永井さん)細胞をよーいどん!で走らせることはできませんしね😝。一般的な細胞培養では難しいので、何かよい方法はないか?と、よりヒトに近い評価系を探していました。そんな時に、この三次元培養を学会で見つけて、これだ!!と思って見惚れました。当時僕は入社1年目だったのですが、共同研究させてもらえませんか!?と先生にご連絡しました。
(清水さん)えー、そうだったんだ。実際何が決め手だったか初めて聞きました。笑🤭。

──永井さんにとって電撃的な出会いだったのですね🤗。その三次元培養って、どんな風に作るのですか?

冒頭の動画のように、プレートにマイクロデバイスを入れ、ヒョウタン様の溝に細胞と組織を作るのに必要な薬剤などを入れて培養します。その後筋肉の細胞同士が融合し、筋肉の培養組織がマイクロデバイスの二本の突起を取り囲むように出来ていくそうです。
(画像は清水さんのスライドより)

(永井さん)細胞に色々な試薬と細胞を混ぜて、このデバイスの溝の部分に入れるのですが、培養して2日後には細胞同士が融合していき、おおよそ1週間ほどで筋肉が形成されていきます。形成された後は電気刺激をして筋肉の持久力のテストをします。

出典:清水先生の研究紹介スライドより

──おお、びよ~ん、と伸び縮みしている😮!!この組織は出来ると自然に二本の突起に沿って上に登ってくるのですか?

(清水さん)いえいえ、実はこれも少し特殊なのですが・・・上下逆向きにした状態で遠心をして、マイクロデバイスの突起の上部に移動させています。これもコツがいるのですが、あまりに強く遠心してしまうと、組織ごと飛んでいっちゃいます😝。

──なるほど、そんなコツが…今回の実験で増えたのは遅筋でしたが、速筋と細胞そのものが違うのですか?

実際に三次元培養中の筋組織。ピンク色に見えているのは培地です。96穴あるプレートですが、毎回全ての穴で培養するわけではないそうです。今回は10個だけ培養中です🧐。

(永井さん)細胞自体は同じなのですが、遅筋と速筋はそれぞれに特有のタンパク質が異なるんです。遅筋はその特有のタンパク質を多く持つ細胞がたくさん集まっている組織という認識です。今回はケルセチンを加えたら、そのタンパク質を発現している筋肉の細胞が増えました。つまり、ケルセチンは遅筋線維を増加させる、ということですね。

──ケルセチンはパフォーマンス向上に期待できるってことですね。筋肉へ効果が期待できるくらいのケルセチン量って日々の食生活で摂取可能なのですか?

(永井さん)よく聞かれます、それ🤭。普段の食生活で意識することに加え、サプリメントとかで補うとよいのかな、と思います。

── 清水さんのマイクロデバイスは今後どこを目指すのですか?

(清水さん)元々学生時代から組織工学をやっていて、より生体を模倣できる技術を作っていきたいと考えていました。再生医療とか移植用の臓器を作るとか。今は薬の評価系にも応用ができるかな、と思っています。最終的には、筋肉をより人に近づけたデバイス作りをしたいなぁと目指しています。

清水さんの研究室の博士前期課程1年中村 征太郎なかむら せいたろうさん(GTR生)。現在マイクロデバイスを使ってiPSあいぴーえす細胞からの筋組織の三次元培養をして研究をしているそうです。「研究は楽しいですか?」と聞いてみたところ、即答で「楽しいです!!」。大変な実験系ですが、エースの今後の活躍を期待しています!!

── 清水さんの研究だけでなく、そのお人柄に惹かれて集まった永井さんも中村さんもとても楽しそうに研究のお話をしてくださいました😊。清水さんの作る筋肉が今後どのように様々な分野で発展するのか・・・楽しみにしています!

清水さんの授業を受けたいみなさんへ
工学部化学生命工学科の主に2年生で開講されている「生命化学」と「化学工学」を担当されています。清水さんの講義を受けに、名大に来てくださいね😊

インタビュー・文:坪井知恵


◯関連リンク


いいなと思ったら応援しよう!