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星追いのワタリガラス

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‐私には、帰るべき場所などありません。 季節の移ろいと、星たちの気配。 それだけが、私に渡りのときを教えてくれるのです‐ 北の辺境の地で暮らす少女スグリは、あるできごとをきっかけ…
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2018年5月の記事一覧

星追いのワタリガラス7. 別れ路の埋め火(下)

星追いのワタリガラス7. 別れ路の埋め火(下)

 春が来て夏が過ぎ、秋を越え冬を耐えれば、やがて再び春が訪れる。
 冬の間に降り積もった深い雪も、凍み重なった厚い氷も、春になれば、照りつける陽光と吹きつける南風とに解きほぐされ、恵みの水へと姿を変える。
 永い戒めから解き放たれた雪融け水は渓を野を駆け巡り、その清冽な流れによってあらゆる汚穢を押し流し、大地を洗い清め、あらゆるものたちのために、新たな生命を育む寝床を用意する。
 遥か昔から繰り返

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