シェア
Gloomy_Weasel
2015年5月24日 16:53
雪解けの水音が谷間にこだまし、木々の枝先が薄緑にけぶり、鳥たちが春の訪れを今や遅しと囀り始めた頃、唐突にそのときはやって来た。 冬の間中断されていたスグリの左腕の文身が、とうとう完成したのだ。「さあ、約束だ。話してやるよ、あんたの父親のことを」 ミクリはそう言うと、囲炉裏を挟んで真向かいに座るスグリを見据えた。その眼差しは冷ややかで、彼女が自分の祖母であることを、スグリが忘れそうになるほど