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美大で観光?!創造力とデザイン思考を育てるVCP for TOKYO Tourismeに参加した話 〜「ふわふわ」から作る観光をデザインせよ〜
「美大で観光を学びませんか?」に誘われて
いつものように観光経済新聞の見出しを流し見していたとき、「美大で観光を学びませんか?」というキャッチフレーズに出会いました。
VCP FOR TOKYO TOURISM。あの武蔵野美術大学で観光?どういうこと?
ふだん広告関連のリンクはクリックしないのですが、この時ばかりはすぐサイトを確認しました。
「アート」「デザイン」「観光」「インバウンド」「ホスピタリティ」「多様性」「ユニバーサルデザイン」など普段アンテナを立てている文字列ばかりがサイトに記載されていて、見た瞬間ワクワクしました。観光業へ転身しようとしているところに、さも天から「これに参加してみなさい」と言われている気がしてならず、気づけば応募フォームを送っていました。
実際に参加できるか当初はわかりませんでしたが、こうして席をいただけたことには何か意味があるのだと思い、これから講義一つ一つから学び得たことを残していきたいと思います。
What is “VCP for TOKYO TOURISM” ?
VCPは、武蔵野美術大学が開発している「Value Creation program(価値創造⼈材育成プログラム)」の略で、今回の“VCP for TOKYO TOURISM” とは多様化する観光目的の中で新しい観光を創造できる人材を育成することを目的に武蔵野美術大学(市ヶ谷キャンパス)で実施される講義です。
公式サイトには以下のより詳細な内容があります。
美大の「創造性教育」を活用し、国内の文化資源の価値を再発見し、観光産業のブランド力とイノベーション力を高めることを目指し、「デザイン経営」を中心に据えた教育プログラム及び実装プログラムです。 全6回の講座では、「アート資源の利活用」をテーマに、アート/デザインの基礎的理解、ホスピタリティ、ユニバーサルデザイン等の座学や、本学の最大の強みでもあるアートに関するワークショップの実践を計画しています。
授業は週1回3時間でテーマや講師は毎週変わります。約2時間座学、約1時間グループワークで特にグループワークはその日の講義のテーマに関するお題があり、制限時間内でチームで意見をまとめ、その日の講師からフィードバックを受けます。
個人だけでなく、チームワークも必要になってくる授業スタイル。観光業という人があっての仕事ならではの協力プレイと、アートならではの講師からうける批評という授業形態が新鮮です。実際にどんなワークを受けているのかは、ぜひ下記のレポートからご確認ください。
初日ということもあり、まずはオーガナイザーの丸山幸伸先生から全体の講義に関する説明があり、つぎに石川卓磨先生からアートと観光の関係性についてお話いただきました。
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【Day1】経験価値マーケティングにアート思考をかけ合わせ「ふわふわ」を創出する
初回の授業で丸山先生と石川先生の講義から得た学びは、「ふわふわ」の創出をデザインすること。
この意味を、見出しにあるワードをピックアップしながら分解していきたいと思います。
経済価値マーケティングとデザイン思考・アート思考
経験価値マーケティングとは、生活者の購買意欲が自分のニーズではなく情緒や感情に左右されているのではという、1999年にコロンビア大学ビジネススクール教授のバーンド・H・シュミットが提唱したマーケティングの考え方です。
そこにアート思考、スポットライトを当てるように問いを与え気づかせる思考、いわゆる0から1を創出するアイデアを取り入れることで、新たな価値を創造できるのだということでした。
アート思考というと、デザイン思考もあります。これについては尊敬するグラフィックデザイナー、ジョン・マエダがかつて残した名言で心に残っている言葉があります。
Design is a solution to a problem. Art is a question to a problem.
— John Maeda (@johnmaeda) June 6, 2009
「デザインは問題解決。アートは問題提起。」
デザイン思考とアート思考の説明として、これ以上簡潔でぴったりな対比はないと思います。縁あって短期間ですがデザインとアート、両方の思考を “体験” できたのですが、その時の経験の裏付けもあってこの言葉には納得です。
では今までにない新たなアイデア(アート思考)で顧客のニーズを理解する(デザイン)とどんな事業が誕生するのでしょうか。
講義では国内初のスターバックス、サイニングストアについて紹介がありました。視覚障害者の方がどのようにコーヒーを頼んでいるのか、質的調査を行なっているとのことです。
さまざまな違いや個性を認め合う共生社会が推進されているなかでのスターバックスのサイニングストアが2020時点で既に開業していたことに驚きです。このカフェは東京2025デフリンピックで間違いなくスポットライトを浴びると思います。話題になる前に近々訪問したいです。
観光における「ふわふわ」の正体
観光は間違いなく「コト消費」です。観光の道中にお土産を買ったり、美味しいものを食べたりなどの行為一つ一つに顧客は「体験」を求めているでしょう。
講義でも事業を検討する上で日常性(ケ)・非日常性(ハレ)、歴史性(伝統文化など)・新奇性(デジタル体験など)2軸でポジショニングマップを作成して考えるとアイデアが広がるという話もありました。
観光や旅行の顧客は常に「刺激」を求めているかというとそうではない。いつも刺激を受けている人にとっては「安らぎ」を求めている可能性もある。そういった意味で「ハレとケ」「伝統性・新奇性」の軸で考えることは、大いに役立ちそうです。
この観光の「体験」に必要なもの、それが「ふわふわ」と表現した「偶然の出会い」です。
あらためて観光とはなにかを考えたくなり、以下の記事を読みました。
観光とは「非日常圏への移動」。どういう時に旅行や観光をしたくなるのか。理由はさまざまですが、旅行は日常の延長線上にある日常生活ではありません。
少しだけ私の話をします。学生だった頃、友人と初めて「瀬戸内国際芸術祭」に参加しました。その時の感覚を今でも鮮明に思い出せます。
あえて下調べをせず、気の向くままに自転車を走らせ、さまざまな作品を鑑賞する。瀬戸内の島々にいたから見られた景色や、頬を撫でる風と、静寂。そして島の人々のあたたかさ。
以来必ず3年に1度のトリエンナーレは、その友人と一緒に行くことが恒例になりました。
忙しい日々の中でふとこの思い出を思い出しては、またあの「ふわふわ」を経験したい、瀬戸内に行きたい、と強く思います。
穏やかな時間を大切な友人と過ごせたこと、何より同じ気持ちを共有・共感できたこと……あの感覚をもう一度。そう思って私たちは新しい「ふわふわ」を求めて瀬戸内国際芸術祭へ足を運ぶのです。
瀬戸内国際芸術祭は私たちにここでしかできない体験を提供してくれたのです。
では仮に自分を顧客にするなら、どうやって東京で「ふわふわ」を感じてもらえるのだろう。ペルソナに自分において観光事業を考えてもいいのかもしれません。またこの話はじっくり考えてみたいです。
次回はDay2について投稿します。お楽しみに!
それではまた会う日までごきげんよう。