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サンダルとスカートとかき氷

蝉が鳴いている。ベランダで洗濯物を干すだけで汗だくになる。年々陽射しが強く感じる。そんな夏がわたしは好きです。眩しい太陽のエネルギーがさんさんと降り注ぐ、夏という季節が子供の頃からすごく好き。

昨年とはうってかわって、のんびりした夏休みを過ごしている。家族の環境は大きく変わったけど、穏やかと言えば穏やかで心地よい。昨年は早々に人間関係やお仕事面が大きくひっくり返って、間髪入れずに父の病気と次男の受験準備も重なって、本当に肉体的にも精神的にもかなり追い込まれていた。だからお仕事が減っても、ちょうどいいくらいで。父が亡くなり次男の受験も終わった今も、同じペースで落ち着いちゃって、のんびりおうち時間が楽しい。かれこれ10年前、人生ここから大逆転してやる!と覚悟決めて、休む間なく西へ東へ走りっぱなしだったから、ちょっとここで一息、ゆっくりこれからの人生を考えなさいよと言われているような氣がしている。

ありがたいことに、わたしのサロンはコロナ禍でも、途絶えることなく程よくいい感じでお客様をお迎えできている。まさに「隠れ家的自宅サロン」という感じだ。このお仕事は時間の延長はあっても早く終われるものではないので、おひとりおひとりにじっくりゆっくり向き合える環境も願ったりかなったり。今のお客様は定期的に通われたり、不定期にでも近況報告を兼ねて日ごろの疲れを癒しに来られたり。今はそんな、ゆっくりしたお仕事ペースがとてもとても心地よい。

自宅サロンがある今の家に引っ越して、10年が過ぎたわけだけど、今やっと「自宅を楽しむ」ゆとりも持てている。入居当時は一軒家に暮らすことが本当に奇跡過ぎて現実味がなく、ずっと”我が家”というより”賃貸”に住んでいる感覚でしかなかった。きっと夫はもっと半信半疑で、仮住まい的に考えていたと思う。騙されてるんじゃないか、とか、いつか追い出されるとか、いつか住めなくなる、みたいな感じで、どこかよそよそしかったし、真ん中にちょこんと座ることしかしない感じだったし、それこそ大の字で寝転ぶようなことがなかった。

すごい人間不信だったし、お金不信だった。
わたしも、そして夫も。

10年ちょっとこの家に住んで、あちこち傷んだり、汚れも目に付くようになってきたけど、追い出されることもなく、嫌がらせを受けることもなく、毎日家族が「ただいま」と言って帰る場所となれていることに安心できている。住宅ローンも支払えてきたから、これからも何とかなるのかなと思えている。本当はもっと新築の頃に、木の香りや新しい畳の匂いを味わえばよかったのだけど、それはもうしかたがない。それでも、ずっと自分の安心できる落ち着き場所を求め続けてきたから、今それがかなってすごく嬉しい。

だから10年経って今やっと「わが家」を楽しんでいる。電化製品が古くなって買い替えたりするのも、大きな出費だけど入居当時よりも紛れもなく自分たちのもの、なんなら財産という信頼があって楽しんでいる。

以前のような賑やかさはないし、地味で目立たない毎日だが、豊かな気持ちが溢れていて幸せを感じられる。

蝉の鳴き声が聞こえなくなったら寂しくなるんだろうな。

改めて今この時を楽しもう。夏だからできること、今年の夏にしておきたいことを考える。まずは足を日焼けさせたい。サンダルにスカートはいて出かけたい。美味しいカフェの抹茶かき氷が食べたい。我ながら、なんてことない平凡な願いでちょっと笑える。


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