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シンデレラはガラスの靴が9割


「シンデレラが世界の少女に愛される理由は、ストーリーラインではなく『ガラスのくつ』の魅力である」

  という話を耳にしたのは、創作論とはまったく関係ないYouTube動画(ゆるコンピューター科学chだったかな?)の脱線トークコーナーでした。
 全然関係ない話題から、自創作に役立つ知識が飛んでくるとは。
 まさに目から鱗でしたので、ちょっとnoteで共有したいと思います。

・シンデレラを振り返る

 これまで、シンデレラの物語は、不幸な境遇に置かれた健気なヒロインが王子様と結ばれて幸せになる、という王道ストーリーが多くの人々の心を捉えているのだと考えていました。
 
 しかし、改めて考えてみると、幼い頃の記憶に鮮明に残っているのは、物語の筋書きよりも、きらきらと輝く「ガラスのくつ」と、ディズニー映画で描かれたシンデレラの美しい青いドレスだなぁと。 
 それに王子様の顔や名前を覚えているかと言われると、正直なところ、記憶は曖昧。 
 物語の結末、つまりシンデレラが王子様と幸せになった後の具体的な描写も、ろくに書かれていなかった気がします。
 
 幼い頃、私たちが夢見ていたのは、王子様との結婚という未来ではなく、あの美しく輝く「ガラスのくつ」そのものだったのではないでしょうか。

・他の童話だと?

 この考察は、童話における「強いビジュアルを持つアイテム」の重要性を改めて認識させてくれました
 では、他の童話ではどうでしょうか。それぞれの物語を象徴する、強いビジュアルを持つアイテムについて少し考えてみます。

・白雪姫: 継母の持つ「魔法の鏡」と、白雪姫を毒殺しようとした「毒リンゴ」
 もし鏡よ鏡、ではなくただの占い師に聞きました!では神秘性に欠けますね。
・かぐや姫: 「月のお姫様」という出自自体が、神秘的で強いイメージ。月に帰っていくシーンは、幻想的で印象深い場面です。
・アラジン:願いを叶える「魔法のランプ」と、空を自由に飛び回る「魔法のじゅうたん」
 どちらも冒険心を掻き立てる、魅力的なアイテムです。
・アナと雪の女王:エルサが魔法で作り出す「氷の城」は、彼女の強大な力と孤独を象徴する、印象的なビジュアルです。

 では、「美女と野獣」はどうでしょうか。
 ディズニー映画では、ベルが着る「黄色のドレス」が広く知られていますが、映画以前から、物語を象徴する強いビジュアルアイテムは存在していたのでしょうか。
 野獣の姿は確かに特徴的ですが、他の童話に比べると、一目で物語を連想させるような、際立って強いアイテムは少ないかもしれません。
 ディズニーは、ベルの黄色のドレスによって、この物語のアイコンを確立することに成功したと言えるでしょう。


・自創作でもそういえばやろうとしていた話

 これらの例から、物語のストーリーをを練り上げることはもちろん重要ですが、読者の心に強く残る「ビジュアルが強いアイテム」を効果的に配置することが、物語の魅力を高める上で非常に重要であることが分かります。

 そういえば自創作でも、こういったアイテムを作ろうとしていました。それが「街の古地図」です。物語の呪いの存在を象徴するアイテム。ですがガラスの靴効果は……まったく得られませんでした。
 第一の理由としては、物語上での役割が地味だったこと。
このアイテムは主人公が呪いに気がつくきっかけにはなりますが、解決には絡まないのです。
 第二の理由、こちらのほうが主でしょうが、ビジュアルがあまりにも地味すぎでした。古地図、本格ミステリーでしたらもう少し需要があったかもしれませんが、自創作は現代和ファンタジーなので派手さに欠けていますね。
 終盤に出した龍の方が、物語のアイコンらしさがありそうです。


・ガラスの靴を登場させたい!

 重要なのは、そのアイテムが物語の世界観に合致し、象徴的な意味を持つこと。
 それでいて読者の欲望をシンプルに刺激する力「美しさ、カッコよさ、可愛さ」を持っていることのようです。
 物語全体を通して、読者の想像力をひきたてる印象的なアイテム。ぜひ新作小説にも出してみたいものです。

 今書いてる新作は、ジャンルとしては和風ファンタジーのシンデレラもの。ヒーローからヒロインにプレゼントのシーンもある予定です。
 あやかってガラス製品!というのは安易すぎるか、インスパイアとして分かり易くて逆にありなのか。
 この小説におけるガラスの靴、ちゃんと見つけたいものです。


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