カタン - 大会におけるルール研究 その3
その3の名のとおり、シリーズになりますのでまだご覧になられてない方はその1, 2も是非ご覧下さい。
では早速論点に移ります。
5. 発見カードの開いた後の交渉
上記「その2」の4'. において、盗賊を動かさなければならないのに、その前に交渉を持ち掛けたプレイヤーは、他プレイヤーから資源を奪う権利を喪失する旨が海外トーナメントルールでは明文化されており、また日本ルールでも同様の解釈ができる旨を述べました。
では同様に、発見カードを開いて資源カードを取る前に交渉を持ち掛けたプレイヤーは資源を取る権利を喪失するのでしょうか?
数年前に知人らとこれについての議論をした際には、その場では結論が出なかったため、Catan.com経由でCATAN GmbHに質問をしました。
その回答は以下です。
しかし、この回答は「資源カードを取る前にトレードができるか」に対する回答となっており、トレードではなく、どのカードを取るべきかの相談や交渉はできるか、と強調し、改めて聞き直したところ、
との回答を得ました。この「3番目の質問への回答」は以下になります。
あまりに余談が長いですが、要は4'. で挙げたFAQの「プレイ中はいつでも会話をすることができる」という回答です。資源カードを取ることができるか否かの直接的な回答にはなっていないように思いますが、私見ではこれを「発見カードのプロセス中に交渉をしても資源を取る権利は保持する」と解釈します。
そもそも 4'.で挙げたトーナメントルールの規定は騎士カードのみではなく、盗賊の挙動全般に関するルールを限定的に規定したものであり、他の発展カードにも適用するのであれば発展カード全般に関する規定として同様のルールを設けるのではないだろうか、と考えます。
6. 3 : 1港を獲得後の4 : 1交換の取扱い
当項以降は交渉とは直接的には関係のない論点になります。
プレイヤーは港に開拓地(または都市)を建設していなくても、同一資源カード4枚を支払うことで他の任意の資源カード1枚と交換できます(所謂4 : 1交換)。
ここで外国版ルールの記載を見てみると
「港に開拓地がなくても、4 : 1交換はいつでもできる」との記載がありますが、では港に開拓地がある場合に4 : 1交換はできるのでしょうか?
想定される「何故そんなことをする必要あるのか?」という問いに回答しますと、独占カードや盗賊への対策で、特定の資源を1枚でも多く消費したいことが稀にあるからです。
例えば、あるプレイヤーにあと1枚でも鉄が入れば都市化して勝利される、という状況においては手札から極力鉄を減らしたい、と考え、3 : 1港の代わりに4 : 1交換が使えるとその目的に適うことになります。
知人らと議論した際には、文中にある"always"を根拠に3 : 1港があっても4 : 1交換はできると筆者は主張しましたが、例によってその場では結論は出なかったため、前項と同じくCatan.com経由でCATAN GmbHに質問しました。
その回答が以下になります。
結論としてはCatan GmbHの回答は「できない」でした。
個人的には"always"という文言に触れていないので厳密な回答ではないと思え、完全に納得しているかと問われるとそうではありませんが、参考として貼られているFAQを見てもCatan GmbHとしては「トレードを除いて、資源の獲得または消費枚数を自らがコントロールすることはできない」と想定していると考えられます。
そのため、資源獲得枚数を意図的に減らすことはできないし、港の変換効率は最小値に固定されることになります。
6.追記
ダイレクトに当稿に関係する記述ではありませんが、カタン世界選手権2022のトーナメントルールにおいて「プレイヤーは、手札を減らすために意図的にカードを誤使用することを禁じます(3.0.15)。」と明記されました。
7. 得点増加のタイミングなど
最後に、さらに込み入った国内大会限定かつレアな大多数の人には関係のない論点になります。
まず実際にあった状況を用いて説明します。
以前審判をしていた人物にこのような状況が生じた場合にあなたならどうジャッジするのかを尋ねると「発言だけでは無効」との回答があり、つまり加点のタイミングは駒を置いた瞬間という判断だということでした。
では資源を支払ったものの開拓地/都市化の駒を置き忘れた、または発展カードを引き忘れて、そのままターンが次手番のプレイヤーに移ってしまった場合はどうジャッジするか、も尋ねてみましたが、同様に「資源は消費するが、開拓地/都市化は無効であり、発展カードも引けない」という回答であり、整合性はあります。
一方で、そのままターンを回した場合に開拓地/都市化/発展カードのいずれも無効とした場合には、上記「その1」の2.及び当稿6.でも述べられているように、手札の資源の枚数を意図的に減らしたりすることはできない点でルール違反となり、仮にジャッジを呼ばれた場合には資源カードを手札に全て戻すか開拓地/都市化/発展カードは有効とするジャッジをするべきである、と筆者は考えます。
仮に得点増加のタイミングを資源を支払い、宣言をしたタイミングとしておけば、開拓地/都市化/発展カードを忘れたとしても、改めて駒を置く、またはカードを引けばいいのでこのような論点は生じません。
そもそも先に挙げた例示では時間切れ時の手番プレイヤーはそのターン終了宣言までアクションをできるとし、開拓地/都市化/発展カードを忘れた場合にも必要な資源は支払っているのだから目くじらを立てずに有効とすれば、得点増加のタイミングなどといったややこしいを考えなくていいのではないでしょうか。
最後に
一連の記事においてルール研究と称して、ルールについて色々と検討してき ましたが、Catan GmbHからの回答メールの末尾に付されていた文章を引用して終わります。
いつものお決まりの文章ですが、プレイヤー全員がこれを心掛ければルール違反もマナ悪もなくなるとは言わないまでも、限りなく減るのではないでしょうか。