カタン - 大会におけるルール研究 その2
その2の名のとおり、シリーズになりますのでまだご覧になられてない方はその1も是非ご覧下さい。
では早速論点に移ります。
論点
3. 騎士交渉
ジーピー社や日本カタン協会が主催するカタン大会に慣れたプレイヤー以外の方とゲームをすると、
「今から騎士カードを使って(あなたの開拓地がある資源タイルに置かれている)盗賊を動かすので、その代わりにあなたの持っている鉄をトレードで出してもらえませんか?」
といったプレイングに遭遇することがあります。これがいわゆる「騎士交渉」と呼ばれる行為です。
さて、この騎士交渉はルール上、問題がない行為なのでしょうか?
結論から申し上げると、①盗賊を動かすという「行為」を材料として、②将来のトレードの約束をしているため、「その1」の1.で扱った狭義の未来交渉だけでなく、広義の未来交渉にもあたると考えられます。
また大会のFAQにおいて、カタンでの取引は常に資源カードの交換が必要とし、無形の取引はないという記載も存在しているため、騎士等で盗賊を他者の元へ動かすことをトレードの材料にすることは当該無形の取引にあたるとも考えられます。
なお、海外ルールでも同様の記載が存在し、取引には常に資源の授受が必要であり、無料やサービス等の無形取引はカタンではできない、と規定されています。
以上より、たとえ騎士カードを開く前の交渉だとしても、騎士交渉はルール違反であると考えられます。
3.追記
元の文章からマイルドにする際に消えてしまったので追記。
「たとえ騎士カードを開く前の交渉だとしても」ルール違反とする根拠は以下のとおり、国内外を問わず、発展カードを使用前に開示することの禁止は明文化されており、またカード内容の示唆も国内では明示的に禁止、海外ルールではその予測不可能性の担保が目的であるということが黙示的に示されているからです。
4. 脅迫交渉
前項の「騎士交渉」と似た行為に「脅迫交渉」というものがあります。
ダイスロールで7を出した際や騎士カードをめくった際に、盗賊を移動して他プレイヤーから資源カードを奪う前に、「あなたの持っている鉄をトレードで出してくれるなら、(あなたの開拓地がある資源タイルに)盗賊を置かないでおきますが、トレードしてもらえませんか?」という交渉をする、このようなプレイングのことです。
騎士交渉と同様に、①盗賊を置かないという「行為」を材料として、②将来のトレードの約束をしているため、広義の未来交渉にあたります。また同様に、国内外問わず、盗賊の置く/置かないをトレードの材料にすることは無形の取引にあたります。
これらを以て、脅迫交渉はルール違反であると考えられます。
また盗賊を置かれたくなかったらトレードをしろ、と強いるのは脅迫行為であり、一般的にマナ悪行為でもあると考えられます。
4'. 脅迫交渉の新しい論点
国内における直近の大会ルール改訂によりルール違反/マナ悪であるかとは別に、脅迫交渉をした場合はもはや他のプレイヤーから資源カードを奪うことができないのではないか、という論点が生じています。
まず国内ルールで、アクションの定義、盗賊の移動を忘れた場合の処理を確認します。
次に海外のトーナメントルールで、同様の記述を確認します。
手番内において盗賊を移動する前に他のアクションを実行している場合は、盗賊を移動する権利はいまだ有するものの資源カードを奪う権利は喪失する、というのは国内外でルールに差異はありません。
一方で海外ルールにのみ、アクションの例示として「他プレイヤーとの交渉を試みる」という一文があるため、国内外でルールに差異があるように見えます。
この国内ルールは今大会からの変更点であり、内容を鑑みれば上記に掲げた海外ルールに合わせた変更であると推測できます。
当該ルール差異が単なる訳出の漏れであるのか、意図的に除外したのかは定かではありませんが、私見では技術的または大会における時間的制約を除き、国内外のルールに差異を設けるべきではないと考えます。
そのため、あくまで私見ではあることを強調しつつ、「脅迫交渉」を持ちかけたプレイヤーは資源カードを奪う権利を喪失するものと解釈します。
よって仮に訳出の漏れであれば改正されることを望みます。
ただし、そもそも前項で扱ったように脅迫交渉自体がルール違反ではあるのですが、仮に脅迫交渉を持ちかけたプレイヤーがいた場合にはペナルティとして資源カードを奪う権利を喪失する、といった運用が為されるのではないかと思われます。
なお、「その1」1.でも触れましたが、海外ルールではFAQにおいて「適切だと判断すれば脅迫もできる」との記載があるものの、同時に、お馴染みの「常識的には、対戦相手が"また明日もあなたと一緒にプレイがしたい"と思うようなプレイをする必要がある」の文言も併記されています。
それ故、個人的には「できる」と「実行する」の間に大きな隔たりがあるものと考えています。
4'.追記
カタン世界選手権2022のトーナメントルールにおいて簡素化され、上記①ii.の「まだ手番プレイヤーであるが他のアクションを既に行った場合に、 盗賊を好きな資源タイルに動かすことはできるが資源カードを奪うことはできない」という分類がなくなりました(3.0.14)。つまり他のアクションを行った場合には問答無用で盗賊は砂漠へ送られ、カードを奪うことはできなくなりました。
つづく
あと少し、お付き合いください。