観光列車「海幸山幸」と、九州で一番おススメの場所「飫肥」 【なぐツー 宮崎を行く 旅の栞】
駅の待合室から、鉛色に滲む景色を眺める。
雨が地面を打ち、水しぶきがけむりのように漂い、靄がかかる。
スマホを手に取り、雨雲レーダーを確認する。
「あと1時間くらいかなぁ」
現在地は、雨雲レーダーで、真っ赤になっている。あと1時間もすれば、プチ線状降水帯が、東の海(日向灘)に抜けてくれそうだ。
もう少し待とう
◇◇
青島駅
まいど! 我らが「なぐツー」本日の予定は、
完璧な計画
のはずであった。
青島駅では、乗客数人が降りたが、鉛色のウォーターワールドに出る勇気はない。全員が駅舎に残り、寡黙に外を眺めるばかりであった。
待合室のベンチに座り、
やることもなくぼーっと、外を眺める。
旅は、時間を有効に使うものではなく、ただ漂うのみ。不思議とイライラする感覚はなく、「無」の状態だ。
そもそも、宮崎駅を出発するときから、青島から先は「運休」であった。
『青島まで、ピストン運行しています。午前中は、この状態だと思うので、海幸山幸も、運行は難しいと思いますよ。』
乗って来た電車の車掌さんも、そう言っていた。
ワンチャン
でも、決まったわけじゃないのに、諦められないよね。
ということで、ワンチャンに賭けて、ここ青島まで来たのだ。
ブオォーーーーっ!
フン
・・・
ホームで待機している、我々が乗って来た電車。青島から宮崎に折り返す予定の電車が、ディーゼルエンジンを止めた。
シーンと静まると、それまで目立たなかった雨音が、大きく響く。
ほどなく、車掌さんが電車から降りてきた。
「日南線、全線運休です。」
そして、我々2人に向かって
「海幸山幸も、運休が決まりました。」
朗らかに告げる。
いやいや、そこで朗らかな笑顔はいらんw!と、心の中でツッコミをいれる。
車掌は、呼吸を整えると、また全員に向き直って、雨音に負けないよう、少し声を張り上げ、こう告げた。
「お急ぎの方、宮崎駅へは、バスが運行しています。
電車は、少なくとも昼まで、運休します。」
さてと、
どうすべ
旅は、あるがまま
とはいえ、昨日の欠航に続き、本日の運休。
欠航は、もう結構、なのだ・・
◇◇
油津駅
みなさん、油津駅を知ってますか?
「あぶらつ」と読みます。
カープファンなら、ご存知ですよね。
これが、油津駅
カープのキャンプ地、天福球場まで、徒歩5分。カープファンの聖地なのだ。
青島からバスで宮崎市内に戻り、ホテルに停めてあったレンタカーに乗換え、油津駅にとうちゃーく。
未だに、日南線は運休中。
駅は、閑散としていた。
ここで、我々が乗る予定であった「海幸山幸」
1分10秒の紹介ムービーをどうぞ!
若者向けの映像で、我々のようなオジサンオバサンには、微妙ですが・・
この観光列車に使われているのが「飫肥杉」、そしてここ油津は、この飫肥杉の貿易で栄えた港街。
レンガ倉庫や、瀟洒な家屋が立ち並ぶ。
百貨店「山形屋」も駅前にある。すごいのだ。
もともと、ココ油津駅で、1時間ほど電車の折り返しを待つ予定であった。用意していたお弁当を、待合室を借りて食す。
「少なくとも、16時までは運休が決まりました」
アナウンスが告げる。
よかった、青島駅で待ってなくて・・
◇◇
飫肥
難読地名のひとつだとおもう。
「おび」と読みます。
飫肥は、妻が一番行きたかった場所。なぜか?
尊敬する経営者である、唐池恒二さん。JR九州の元社長で、ななつ星などの観光列車を立ち上げた、カリスマ経営者だ。今回乗り損ねた「海幸山幸」も唐池さんが立案している。
その(九州を熟知している)唐池さんが、一番好きな場所として挙げているのが
飫肥の街なのだ。
行きたくなったでしょ~ 笑
電車は、不通だが、すっかり雨の上がった飫肥へ、電車でGO!じゃなく、クルマでGO!
飫肥杉と、苔が広がる城内。
飫肥と伊東家
ゲーム「信長の野望」をやったことありますか?
(私は、無いのですが、)島津家からスタートすると、右隣に弱小藩があり、簡単に攻略できるだろう、と攻めると、落城しない。
らしい。
飫肥藩は、小さな組織であったが、長らく独立を貫いた。その立役者が、伊東さん。
伊豆半島東部から移り住んだ、伊東家。
一時期(1572年)、島津に攻略されます。が、豊臣秀吉の世に移り、秀吉より飫肥城をもらって(1587年)から14代(280年間)にわたり、伊東家が治めてきたのです。
伊東家は、あの伊東市の出身。
「いとーに行くなら ハ・ト・ヤ ♪」
の伊東である。(知らないか・・)
飫肥は、いまだに伊東市と交流があるようだ。(歴史って面白い)
安定した域内を反映するかのように、武骨さがなく、優美でたおやかな城内。そして、適度な観光客姿。唐池さんが好きな理由が、わかるような気がしました。
城を出ます。
鯉の泳ぐ用水に沿って、城下町が広がる。
厚焼きたまご
そして、外せない飫肥グルメのひとつが、厚焼きたまご。
それが、コチラ!
プルンとした舌触り、玉子のコクと、砂糖とみりんの優しい甘味。
そして、つめたーーい、お茶。
汗をかいた後に、最高のデザートです。
高級な卵と砂糖、かつてはハレの日の料理だったそうです。こいつ、七輪(炭火)で焼いているんです。
訪れたお店はコチラ
◇◇
朝は、電車運休で、万事休す。
と思ったのですが、なんとか念願の飫肥も訪れることができました。飫肥は、じっくり時間をかけて回った方が良いです。
飫肥に短し・・
って、ならないようにね!
ー 次回予告 ー
宮崎市内に戻り、
今晩のお食事・・
おっと、その前に、アングラ宮崎、第二弾!
(つづく…)
宮崎タビ、最初から読んでない方は、コチラ