私とアフリカンファブリックとの出会い②一歩前に踏み出すこと
ガーナ生地を使ったアパレルブランド「Cherry et Cacao(チェリエカカオ)」を運営している大森渚と言います。
前回も読んでくださったみなさん、ありがとうございます。今回初めてお会いしたみなさん、初めまして。数ある記事の中からたどり着いていただけて、嬉しいです。
前回、アフリカンファブリックとの衝撃的な出会いの話をしましたが、その後数年間はそれまでと変わらない生活をしていました。
しかし、30代後半になった私には悩みがありました。
結婚して5年以上経っていましたが、なかなか子どもを授かることができなかったのです。
不安になり婦人科に行ってもまったく理由がわからない。
理由がわからないまま、不妊治療を受けることになりました。
自然の妊娠プロセスに近い人工授精という方法を経て、もう一段階上の体外受精という方法に進みました。
体外受精は女性の身体から卵子を採取し、受精・培養して子宮内に戻す方法です。
しかし、採卵をしても「まったく卵子が採れない」という経験を2回しました。
「卵子が採れない」ということは、その先には進めないということです。
それは、今までの人生で最も辛い経験の一つでした。
神様から見放されたような、自分の存在を否定されたような気がしました。
その後も、表面上はニコニコとふるまって仕事も続けていましたが、この経験は私の心に大きくのしかかってくることになりました。
靄のようなものが膨らんでいき、心をすっぽりと覆っているようでした。仕事にも没頭できず、小さなミスが多くなりました。
仕事がうまくいかないと自分を責めてしまう。自分を責めるとさらにうまくいかなくなる。
悪循環に陥っていき、止まらなくなりました。
さて、2017年は、西アフリカの国・ガーナと日本の国交60年の年でした。
ミュージシャンを生業としている私の夫は、所属しているバンドが現地でのセレモニーやイベントで演奏することになり、ガーナに行く機会を得ました。
数週間後、夫がガーナ滞在中に撮ってきた動画を、私は食い入るように見ていました。
私の心を動かしたのは、そこに映っている人々の様子でした。
褐色の肌がつやつやと輝く、エネルギーにあふれる人々。彼らが着ている色鮮やかなドレスにも心を奪われました。
こんなにパワフルで素敵な人たちが世界にはいるんだ…とため息が出ました。
自分が抱えている問題が、大したことの無いことのように思えてきました。
そして、夫が私にお土産として買ってきたアフリカンファブリックのドレス。
花や鳥など自然のものをモチーフにした色鮮やかなドレスは、身につけるだけで少し心が明るくなり、前に踏み出せるような気がしました。
私の心の靄が、少しずつ晴れてくるのがわかりました。
私たちは、さまざまな悩みや痛みを抱えて生きています。そして、それらを一人で抱えてしまったり、それらに前に進む力を奪われてしまうこともあります。
でも、おしゃれをしたり、お気に入りのものを身につけることで、少し心が晴れたり、一歩前に踏み出そうという気になったりするのです。
アフリカンファブリックが生活に与えるのは、ほんの少しの変化です。
それでも、そのほんの少しの変化が、みなさまの生活を少しでも明るく彩りに満ちたものにしてくれることを、私は願ってやみません。
その後、投薬や手術も含めた治療を進め、40代前半にしてようやく子どもを授かれる身体になりました。
現時点で、私はまだ一般的な意味での母親ではありません。
また、悲しいお別れを何度か経験しました。
しかし、お別れした命と、少しの間でも一緒にいられたことを幸せに思っています。彼らは、私に強さを与えてくれました。
さまざまな経験をすることができた感謝を胸に、これからも前に進んでいこうと思います。
Cherry et Cacao(チェリエカカオ)
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